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奥田英朗 『サウスバウンド』 (角川書店、2005年)
文庫化されてるのを本屋で見かけ、つい買ってしまうのを抑えるべく再読。
やっぱり痛快でおもしろい。
世の中の常識も世間の目も全く意に介さない破天荒な元過激派の父親を持つ子供の視点で、いろいろな“現実”とやらとの葛藤・衝突が描かれている。
子供のバイブル、『ぼくらの七日間戦争』のようなおもしろさがある。
どの登場人物もキャラが立ってて映像化にはもってこいの作品。今の映像作品業界の技術だと、せいぜいキャラが立ってる分かりやすい人間しか描けないし。
そんなわけで、10月に映画が公開される。
この映画、話の半分は夏の沖縄が舞台なのになぜか秋公開という失策は置いとくとして、「予告編」を見た限り、せっかくの分かりやすいはっきりしたキャラが完全に死んでいる。トヨエツと天海祐希って、なんでそんな暗い人をキャスティングするか? なんか勘違いしてこの作品に“リアル”でも求めたのか? よくわからない。
それはさておき、今回印象に残ったのは話の終盤に出てくる次の言葉。
「 『税金なら納めん』 (中略) どこかのキャスターが、今年の流行語大賞はこれで決まりだって言ってた 」(p459)
「 世の中にはな、最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがあるんだ。奴隷制度や公民権運動がそうだ。平等は心やさしい権力者が与えたものではない。人民が戦って勝ち得たものだ。誰かが戦わない限り、社会は変わらない。おとうさんはその一人だ。
(中略)
おまえはおとうさんを見習わなくていい。おまえの考えで生きていけばいい。おとうさんの中にはな、自分でもどうしようもない腹の虫がいるんだ。それに従わないと、自分が自分じゃなくなる。要するに馬鹿なんだ 」(p485)
ただ権威・権力に反対するだけでなく、理想があるのがいい。