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稲葉振一郎 『社会学入門――〈多元化する時代〉をどう捉えるか』 (NHKブックス、2009年)
「 社会学とは何か?」(p10)を考え、社会学とは「 社会的に共有される意味・形式の可変性・多様性についての学問 」(p209)である、という答えを提示している本。
「 「社会学ってあまりに何でもかんでもやるので、かえってつかみどころがない」 」(p9)から「 社会学とは何か? 」を明らかにしなければ、という問題意識には共感する。
けど、その答えには全く首肯できない。
だって、「 社会学とは何か?」って、「 社会を研究する学問 」に決まっている。 すると、当然のごとく、「 じゃあ、“社会”とは何か?」という問いにたどり着く。
言い換えれば、「 社会学とは何か?」という問いに答えるには、あまりに当たり前のことだけど、「 社会とは何か?」という問いに答えなければならないのだ。
にもかかわらず、「 社会学とは何か?」という問いに対する本書の答えには、「 社会 」という言葉が使われてしまっている。 これでは、説明になっていない。 「会社」というものを「 会社員が働くところ 」と説明し、「 じゃあ会社員って何?」って聞かれて「 会社で働く人 」と説明するようなものだ。 (トートロジーってやつだね。)
それから、この本は、学部一年生向けの社会学入門を意識して書かれているとのこと。 それで確かに、社会学の内容を全く知らなくても分かるように、社会学を説明しようとしている。
だけど、社会学の基本を説明するために、コンピューターの仕組みだとか絵画史(キュビズム、シュルレアリスムなど)だとか、社会学以外のものではある程度の知識がないときつくなっている。 こんなの、小学生に算数を教えるのに英語を使うみたいなものだ。
そんなわけで、決して「社会学入門」にはなっていない本。