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 読売新聞盛岡支局編 『椎名素夫回顧録 不羈不奔(東信堂、2006年)
 
 
 読売新聞岩手県版に連載されたものに加筆し、新たに椎名素夫の高校の同窓である岡崎久彦との対談を加えたもの。

 椎名素夫は、三木武夫を指名した「椎名裁定」で知られる椎名悦三郎の息子であり、「外交通」と称される数少ない政治家の一人であった。(2004年に政界を引退。)

 北朝鮮によるミサイル発射問題が起こり、石破茂をはじめとした「軍事オタク」がのさばっている現状に対して、「“軍事”ばかりで“外交”が欠けている」と思っていたところ、この本を見つけた。
 
 
 結果から言うと、北朝鮮のような“厄介な国”との外交については有益な知見はあまり見つけられなかった。

 椎名素夫の「外交」は、主にアメリカの要人たちとの個人的な交流だからである。

 そして、その要諦は、自分が「話せる」ようになることで相手との信頼関係を築くことだからでもある。

 確かに、外国との関係は政府の要人たちの間での個人的な関係に依存することが往々にしてあるし、信頼の基礎であるコミュニケーションは官僚の作った作文の棒読みではダメである。

 しかし、このような「外交」では、北朝鮮や中国のような前提を共有できない相手に対してどこまで適用できるか疑問である。

 これでは、現状の日本のように、“外交”をすっ飛ばして“軍事”に行き着くような状況を打破することはできない。

 実際、岡崎久彦との対談で見せる椎名素夫の中国に対する外交スタンスは、ほとんど「無視」だけである。この点、「Love America☆ Love is blind☆」という点での椎名素夫と岡崎久彦の一致は気持ち悪いほどである。(こういう人たちを、「冷戦時代の思考から抜け出せない旧世代の遺物」という。)
 
 
 北朝鮮によるミサイル発射問題が起こって改めて実感したのは、日米vs.中国及び北朝鮮という構図になったとき、中国・北朝鮮と地理的に接している日本と、太平洋を挟んでいるアメリカとの間の、被るであろう被害の非対称性である。

 確かに軍事超大国であるアメリカと“軍事上”の同盟関係にあることは大きなメリットをもたらすが、それとは別に、問題が起こったときの被害が大きくなる近隣諸国との“外交上”の関係は日本が独自に築き上げる努力が必要であるはずだ。

 この後者の、近隣諸国との外交においても「アメリカ頼み」というのでは、やはり外交なしに軍事的な話になってしまわざるを得ない。
 
 
 「票にならない」と言われる外交を自分のフィールドとし、自民党では無派閥、自民党を抜け出してからは無所属の会で貫き通すという椎名素夫の生き方は嫌いではないが、残念ながら、喫緊の課題に対する教訓という点では限定的であると言わざるを得ない。

 そもそも、椎名素夫が「外交通」と言われるときの「外交」は、外交と言うよりかは、「人的ネットワーク作り」と言った方が適切なものである。もちろん、「人脈作りも外交である」と言うのなら、やはり「外交通」ということになるが。

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