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門倉貴史 『統計数字を疑う』 (光文社新書、2006年)
新聞やテレビでよく見かける統計データを一つ一つ取り上げ、そのおかしな点、注意すべき点に分かりやすく突っ込んでいく本。
類書と違うのは、統計学を教えることを前面に押し出してなくて、身近な例を一つずつ解説していって結果として統計センスが身に付くようになっているところ。
取り上げられるのは、平均寿命、出生率、「豊かさ指標」、犯罪検挙率、「割れ窓理論」、「○○の経済効果」、消費者物価指数、新興国の経済統計、地下経済など。
著者はエコノミストだから経済統計が多めになっているけど、本当によく目にするものばかり取り上げられているから、興味を持続できるし、即効性がある。
また、「その統計データがどのように作られているか?」というところから説き明かしているのもこの本のユニークなところ。つまり、データの読み方を教えるだけではない、ということ。
特に、民間シンクタンクが作る「○○の経済効果」というしばしば新聞をにぎわす試算の出し方は初めて知った。やっぱり大抵のものは真に受けてはいけない代物だ。
この「○○の経済効果」に関しては、これを作る民間シンクタンクの内部事情も書かれていておもしろい。予想通り、少しでも目立つことが使命となっているようだ。まあ、需要があるから供給するわけで、面白ければ報じてしまうマスコミの問題も大きいが。
数字を全く信用せず自分の直感だけを頼りにするのもきついが、数字を出せばそれで終わりというのもきつい。
この本は後者の人に効果がある本であって、前者の人の信念を強めるための本ではない。
この本の射程範囲を超えることだけど、果たして、最近テレビによく出てくる「教育を語る人たち」のように前者に属するような人にはどうすればいいのだろうか?