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『 橋を渡ったら泣け 』 ( 作:土田英夫/演出:生瀬勝久/出演:大倉孝二、八嶋智人、奥菜恵、岩佐真悠子ほか/2007年3月5日~29日/@Bunkamuraシアターコクーン/\8500[S席] )
くだらない。
孤島に残された男女8人の物語。
と来れば、人間の本性が出る原始的な極限状況なわけで、この興味深い題材は、これまで色々と描かれてきた。
ゴールディング『蝿の王』、楳図かずお『漂流教室』なんかが代表的。
ちょっと幅を広げれば、デフォー『ロビンソン・クルーソー』、ホッブズ『レヴァイアサン』なんかも欠かせない。
他にも、上で挙げた作品の映画版やドラマ版から、似たような状況を作って男女に生活させるバラエティ番組など、挙げれば切りがない。
そして、こうした極限状況では、権力、食料、女をめぐる微妙で複雑な争いが繰り広げられる。
しかしながら、この『橋を渡ったら泣け』で描かれる“争い”は、あまりに粗雑で素朴で浅薄。
「人間は優しくて争いを好まない」と信じて疑わない優等生な中学生が考えたみたいなレベル。
権力を握った人が、立派な服装をしたり、奇妙な儀式をしたりという(『蝿の王』における“ほら貝”とかを意識したのかもしれない)象徴的(?)表現も、あまりに単純で表面的。
これだけ有名な劇場で、これだけ有名な人たちが出演してる大規模な芝居なのだから、「本当におもしろい?」と誰か疑問を持たなかったのだろうか。
逆に、大規模だからこそ、組織の論理が強く働き、皆が組織の従順な歯車の一部になってしまったのだろうか。
いずれにしても、そんなわけで、見所といえば、独特な空気感のある八嶋智人のおもしろい一挙手一投足(含、台詞)を生で見れたところぐらいなものだった。
というか、「もしこの舞台に八嶋智人がいなかったら」と考えるとゾッとする。