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 柿喰う客・第9回公演 『女体カーニバル』 (作・演出:中屋敷法仁/2007年3月21日~4月1日/@王子小劇場)
 
 
 「柿喰う客」は、2006年10月の「ラゾーナ川崎プラザソルOPEN記念10団体合同公演」での『人面犬を煮る』を観て、「最高だ」と思って以来2度目。

 今回の公演は『女体カーニバル』と称し、「サバンナの掟」、「口だけの女」、「他人の不幸」という繋がりがありつつも独立した3作品が交替交替に上演されている。

 3作品とも観た。

 3作品ともおもしろかった。

 安逸をむさぼっている脳を、危険にさらしたり(「闘わなきゃ現実と」by役所広司)、活性化させたり(「アハ体験」by茂木健一郎)してくれるおもしろさ。あるいは、活発に働いている脳を、軽々と飛び越えていく(「シンジラレナ~イ」byヒルマン監督)おもしろさ。
 
 
 それで作品の内容だけど、説明するのが実に難しい。

 なんせ、27人も出演者がいて、その27人のほとんどが強烈なキャラを持っていて、最初から最後まで考える暇がないほど無駄なくどんどん進んでいって、展開も途中でマジなダメ出しをしだしたり出演者全員で歌いだしたりと多彩なアイディアが取り入れられていて、台詞も映画、アニメ、CM、企業名、商品名、ニュース、歴史の教科書、18禁な性用語など幅広いレファレンスがあって、それでいて、メインのストーリーには社会派なメッセージがある、という作品なのだ。(これでもまだ到底言い尽くせていない。)

 そんなわけで、自分にとってポイントだと思うところについて、いくつか書いていこうと思う。
 
 
 1つ目。中屋敷法仁。

 今回分かったのは、自分が、柿喰う客が好きというより、劇団の代表で、作・演出・出演をしている中屋敷法仁が好きだということ。

 作家・演出家としても、役者としても、素晴らしい。本当にその才能に惚れ惚れする。 (※その内容に応えられる役者が集まって初めて、一つの芝居として成り立つことは言うまでもない)

 まだ、20代前半(23?)だけに、今後の成長と活躍が期待される。
 
 
 2つ目。リアリティ。

 上で書いたことを見ると、この舞台はただおもしろおかしくふざけているだけに思えるかもしれない。

 しかし、随所で、人間の内面や社会に関する(批評性のある)リアリティを感じさせる。

 例えば、台詞に多用される、フェラチオなどの放送禁止な性用語。

 この種の言葉を公の場で聞くことは皆無だが、男性にとっては、私的な会話や頭の中でごく普通に使われる、というか人生のかなりの時間において、この種のことが頭の多くの部分を占めていることは否定しがたい事実である。 (※ただ、これは女性にとっては共感しにくいかもしれず、この点、この芝居の射程範囲や普遍性を低めてしまっている。エンターテインメントとして見た場合だけど。)

 これは、現実をありのままに表現することによるリアリティの提示だが、その一方で、アイロニカルな方法によって表現されるリアリティもある。

 例えば、市内を不幸だらけにしようとする市長。

 なぜ、そんな、実際の市長たちとは“真逆”のことをするのか? 

 その答え、それは「他人の不幸」のメイン・メッセージだが、すなわち、「大衆は他人の不幸を待ち望んでいる。そして、不幸になった者はその不幸によって(悲劇のヒーローや主人公としての)生きがいを見つけることができる。」つまり、皆が不幸を望んでいる、のである。

 これは、日々のワイドショーを見ればすぐに納得される現実である。
 
 
 3つ目。二階堂瞳子。

 この舞台には、このブログに今回の舞台の宣伝も含め何回かコメントして頂いたことのある二階堂瞳子が、3作品全部に客演している。

 二階堂瞳子in柿喰う客は、自分が柿喰う客を知ることになった舞台『人面犬を煮る』のときにもあった。 (というか、正確には、二階堂瞳子目当てで柿喰う客の舞台を観た。)

 正直に言えば、そのときの(口裂け女の)演技は、柿喰う客の中では、役どころを考慮したとしても、軽くて浮いてるような感じがしたものだった。

 けれど、今回は、3役ともしっかりと柿喰う客の舞台の中に溶け込んでいた。というかむしろそれに止まらず、(自分が観た回で、という限定は付くけど)「サバンナの掟」と「他人の不幸」では、舞台の雰囲気を作るのに貢献する好演であった。 (ちなみに、「口だけの女」では、“キモキャラ”というベースライン(基本線)からズレるポイント(点)がなく、平坦で笑いどころがなかったような気がした。ベースラインのレベルは高いと思うんだけど。)
 
 
 4つ目。王子小劇場。

 この劇場、こんな風に論じられるほど有力な劇場らしい。

 だとしても、観客にとっては優しくない。

 かなり狭い上に、客席内の高低差はあまりないし、客席と舞台との高低差もあまりない。

 窮屈だったり舞台上が見えなかったりすると、芝居を楽しむどころではない。

 こんな観客に優しくない劇場が有力であるのなら、進化や成長をもたらしてくれる最低限のマーケット・メカニズム(もしくは自浄作用)さえも機能してないということを表している。

 そして、これは小劇場演劇全体にも当てはまる問題だと思われる。
 
 
 とりあえず、こんなところ。

 周辺的なことばかり書いていて、おもしろさの核心的な部分について言葉にすることができていないのは、力不足ゆえに仕方ないとは言え、なんとも残念。

 けど、本当におもしろかったんだ。



〈前のブログでのコメント〉

遅くなってしまいごめんなさい!!

ぅおー…読ませて頂きました。夢中になって読ませて頂きました…

改めて観に来て頂いて、ありがとうございました!!!!

実際、やっている方は考えているんだか考えていないんだか…(でも、柿の出演者に言える事は…例えば「俺は桃太郎を演じて、桃太郎として生きているんだから…台本にはあるけど、桃太郎はこんなこと言わないし、演じている俺はこんな台詞言えませんッ!! 桃太郎の気持ちは、演じている俺にしか分かんないのッ」的な下らないプライドはなく、で) 
とにかく必死で必死で芝居やって、二週間の祭りを本気で楽しんで、伝説残して悔いを残さず!
意欲満々、若干息苦しい王子の地下で、27人大暴れさせて頂きましたw


「正直に言えば、そのときの(口裂け女の)演技は、柿喰う客の中では、役どころを考慮したとしても、軽くて浮いてるような感じがしたものだった」
…私もそう思います。 と、言うのも、実際今まではメイン系…、というかとにかく話を進めていく為のストーリーテラー的、寡黙で真面目な、柿っぽくない役ばかりを任されていたんですね、柿では。
仮死魔霊子さんだって一応主演だけど遊べる役ではないし、実際柿に初めて出演した企画公演「とりあえず、ナマで!」では主演ながらも、肩書きでは冷淡な歴史学者(しかも男役)でしたから…
だから今回、鎖骨さんや獣道さんが出来て、周りの共演者には「今回で瞳子はすっごい成長したね。開花、したね」と言ってくれたのが嬉しくて… とにかく、今回大好きな柿の作品が一気に3作品…てか3役も出来るッッッ!? と…たまらなかったんですw


観に来て下さり、何度も劇場に足を運んで下って本当にありがとうございました!!
今後、柿と私の関係がどうなっていくかはまだ分かりませんが…こんなにも柿を愛して下さって本当にありがとうございます!!


PS差し入れで頂いた「もちくりーむ」…なん~~~~~~~~~まら美味しかったです!!!!もうホントに感動でした!感動でした!! …サスペンス…!!
ありがとうございました☆★ 
commented by 二階堂 瞳子
posted at 2007/04/16 02:59

熱いコメント、ありがとうこざいます!コメントしにくい硬い文で、なんか申し訳ないですw

本番がおもしろかったということは、考えていようがいまいが、それまでの取り組み方もきっと合っていたんでしょう。

今回の鎖骨さん・獣道さんでの「開花宣言」は、素の瞳子さんからしたら当然のように自分には思えます。むしろ、だからこそ、ソネコの好演の方こそ、役者・二階堂瞳子の芸歴上、ドン・ミスィッなところだと個人的には思っています。

柿と瞳子さんとの相乗関係がこれからも続くことを本当に願ってます!(でも、柿の喧騒の中にいた役者さんが他の舞台に出たらどうなるか(どんだけ目立つか。浮くか?w)というのも興味深いところですw)

改めて、楽しい舞台をありがとうございました。
commented by Stud.@管理人
posted at 2007/04/16 19:59
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