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 片岡鉄哉 『核武装なき「改憲」は国を滅ぼす(ビジネス社、2006年)
 
 
 ネットで検索してみるとなかなか評判な本。

 主な主張はタイトル通り。

安倍首相に直言したいのは、日本に好意的なブッシュ政権が続いているうち(注:2008年まで)にできるだけのことをやっておいてほしいということだ。それを列挙しておけば――、
 ①日本の集団的自衛権行使による日米攻守同盟の確立。
 ②憲法の改正(注意書き略)
 ③日本の核武装 (pp12-13)

 
 
 ただ、自分に関心があるのは90年代後半の日本の政治と経済の動向である。

 しかし、この点、解釈・主張の前提になる事実認識に問題がある。

クリントンは橋本首相に「景気刺激策をやれ」「公共投資をやれ」と注文をつけてきた。ところが日本は、それ以前に、アメリカ国債をかなり大量に買っていたため、橋龍は「日本はやるべきことはやった」と思っていたのだろう、クリントンの注文を軽くあしらった。するとクリントンは、 (中略) 中国からの帰途、東京へ立ち寄らなかった。 (中略) それがシグナルになって、ニューヨーク・タイムズが急に橋龍叩きをはじめ、自民党は次の参院選挙に敗れてしまった。それ以後、橋龍の運は二度と元には戻らなかった。 (pp14-15)

 重複するが、もう一つ詳しい説明を引用。

橋龍の金利操作(注:1996年5月の大蔵省による公定歩合引き下げ。p54)で再選されたクリントンは大喜びで、ここに「ビル・リュウ」の蜜月がはじまったが、しかし長続きはしなかった。クリントンの二期目に、日本の不況がじつは恐慌であることがわかってきたからだ。そこで財務長官ローレンス・サマーズは景気刺激策としての「公共投資」と「減税」をやいのやいのと要求してきた。察するに、橋龍総理はムッとしたのであろう、アメリカの要求を軽くあしらった。
 それに対するクリントンの反撃は、一九九八年七月の参院選の直前に来た。六月に訪中したクリントンは帰途、東京に立ち寄ってブリーフィングすることを避けたのである。 (中略) しかも選挙戦の最中に、ニューヨーク・タイムズの東京支局長ニコラス・クリストフが一面トップで「ハーバート・フーバー・ハシモト」への総攻撃をはじめた。橋本総理はアメリカに大恐慌をもたらしたフーバー大統領と同じことをやっている、と書き立てたのだ。この介入で自民党は惨敗した。 (p55)

 “確実な”誤りを2点指摘しておこうと思う。

・「1996年5月」に公定歩合は引き下げられていない。公定歩合は1995年9月から2001年2月まで0.5%で変化していない。「1996年5月」という表記が「1995年9月」の単純な表記ミスだったとは受け取れない。なぜなら、橋本龍太郎が首相に就任したのは、公定歩合が底値になって以降の1996年1月だからである。つまり、「橋龍の金利操作で~」という事実認識は誤り。

・ニューヨーク・タイムズ紙のクリストフによる「橋本総理=フーバー大統領」という批判記事が掲載されたのは、「選挙戦の最中(98年7月)」ではなく、1997年12月17日のことである。(Sheryl WUDUNN with Nicholas D. KRISTOF “INTERNATIONAL BUSINESS; Japan, Economic Power Aside, Seems Paralyzed by Asia Crisis”) また、クリストフによる橋本首相批判は、クリントンの訪中以前の98年4月からすでに行われている。

 もちろん、これら以外にも、「クリントンは元々親中なのでは?」とか「アメリカの介入によって自民党は参院選で敗北したのか?」といった疑問点はある。
 
 
 いずれにしても、そんなわけで、90年代後半の日本の政治・経済に対する新しい見方を得られるようなまともな本ではなかった。

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