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 東谷暁 『エコノミストは信用できるか(文春新書、2003年)
 
 
 未読の新書を減らす【新書週間】の4冊目。目標冊数の半分に到達。順調。
 
 
 バブル、IT革命、平成不況などに関するエコノミストの発言を「一貫性」の観点から検証した本。

 「エコノミストの市場」は、発言に責任が伴わず、それを事後的に検証するシステムも存在しないだけに、「消費者」にとっては非常にありがたい仕事である。

 検証結果は、全体的には、状況に応じて簡単に主張を反転させている人が多い。とはいえ、「一貫性」においても「予測」においても完璧な人などもちろんいない。しかし、目も当てられない詐欺師のような「エコノミスト」だけには注意しなければならない。(それにしても、一体なぜ、そういう人たちが「エコノミスト」でいられるのか? あるいは、なぜ「エコノミスト」になれたのか?)ちなみに、そんなこの本に登場する中でも一番酷いのが「日本経済新聞・社説」であることには多くの人が賛同してくれるのではないかという気がする。
 
 
 ところで、この本を読んで自分の中の疑問が一つ解決した。

 それは、3月初めに日銀が量的緩和の解除を決定したとき、「構造改革万歳!弱肉強食の市場競争万歳!」の人だと思っていた竹中大臣が、日銀に対してかなり強硬に「反対」の意見を述べていたことである。「矛盾するのでは?」「いつの間にか転向したの?」と疑問を感じていた。

 結論から言えば、自分が感じた疑問は正しかった。

ここで思い出してもらいたいのは、竹中氏がゼロ金利にも金融緩和にも反対していたという事実だ。『週刊東洋経済』2000年10月28日号では「ゼロ金利は、所得配分をゆがめ資金の非効率な配分を温存するというマイナスの効果をもたらす」と述べ、『Forbes日本版』2000年11月号でも「ゼロ金利の下では、内容の良くない非効率な会社でも借り入れができてしまう。・・・・・浄化作用を、ゼロ金利は結果的に阻んでしまうことになる」と強く主張している。 (pp216-217)

 竹中大臣も、責任のある立場に就いて、信念も体面も関係なく、「ワラにもすがる」状態になったということだろう(笑)
 
 
 それはさておき、この本は他人の失敗を笑うだけの本ではない。この本では、その時々の重要な経済問題に関するあらゆる主張を取り上げているから、この本を読むと90年代の経済論戦を鳥瞰することができる。また、個々の主張の紹介も簡潔で要を得たものだから、とても勉強になる。

 さらに、この本が便利な読書案内になっていることは言うまでもない。自分が興味を持ったのは、中小企業の実態に詳しいらしい山口義行『誰のための金融再生か』、「インフレ・ターゲット論の総帥」である岩田規久男『デフレの経済学』といったあたり。日本経済に対する自分のスタンスを定めるべく、いつの日にか読んでみたいところではある。何せ、自分のスタンスが決まらないうちに、現実の状況の方が変化しつつある。別に、それでも構わないといえば構わないのではあるが。

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