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シドニー・タロー 『社会運動の力――集合行為の比較社会学』 (大畑裕嗣監訳/彩流社、2006年)
社会運動の生成、維持、動態などを包括的に分析するための、あらゆる枠組み・概念を網羅し、論じている基本文献の全訳。
全体は3部からなり、教科書的な分かりやすい構成になっている。
第Ⅰ部では、集合行為の汎用的レパートリー、出版革命、アソシエーション形成、国家形成などが近代的な社会運動を生んだと論じられる。
第Ⅱ部では、社会運動の分析枠組みとして、政治的機会、たたかいの様式、フレーミング、資源動員といった有名な概念が導入される。
第Ⅲ部では、運動の動態として、たたかいのサイクル、運動の成果、トランスナショナルなたたかいなどについて論じられている。
説明に際しては、フランス革命からトランスナショナルな運動まであらゆる事例が縦横無尽に持ち出されている。
そんなこの本に付きまとう弱点は、抽象的な概念や枠組みにしても、縦横無尽に持ち出される事例にしても、「どこまで恣意性を排除できるのか」ということである。
もちろん、それはこの本で提示されている枠組みを実際の事例に適用している研究を見てみないと分からない問題ではある。
しかし、(あくまで一つの例ではあるが)オルソンの提示した集合行為問題を「集合行為は現におこって(いる)」という理由から軽視しているようでは、理論化や厳密さの発展は望めないように思えてしまう。
そんなわけで、この本は、社会運動の生成・維持・発展に関する“重要そうな変数”を網羅的に列挙した本という感想しか持てなかった。(もちろん、これだけでも意味はあると思うが。)