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ダニエル・ベル 『資本主義の文化的矛盾(上)』 (林雄二郎訳/講談社学術文庫、1976年)
久しぶりに上巻だけ読んでみた。
社会を構成する政治(平等志向)、経済(効率志向)、文化(自己充足志向)はそれぞれに矛盾をはらんでいるけれど、3つの領域のうち特に文化が大事だとして、文化が崩壊しつつあることに警鐘を鳴らしている書。
社会科学、文学、絵画、演劇など、あらゆる分野から縦横無尽に引用している博識ぶりはすごい。
だけど、いかにも時代拘束的な本。
1960年代のアメリカにおけるカウンター・カルチャーの自由奔放ぶりに影響されている。文化に関する記述は特に。
文化を重視するのも、文化の「崩壊」に危機意識を持っているのも、そのためだと思われる。(もちろん、直接的に60年代の文化だけを論じているのではない。むしろ、もっと長いスパンに焦点が当てられてはいる。)
とはいえ、この種の文化を重んじる主張はアーサー・シュレジンガーとかロバート・パットナムとか、アメリカには根強い時代“非”拘束的なものなのかもしれない。いつの時代の日本にもあるし。
それでも、枠組み、視点の大きさが類例を見ないのは間違いないけど。
それから、政治、経済、文化という3つに分ける枠組みより、ハーバーマスみたいに政治、経済、社会という3つに分けた方が、分析単位の同質性という点からして適切だと思う。
「公共家族」という(当時の印象で)怪しげな概念が出てくる下巻はいいけど、中巻もできれば読みたい。
と、思わせるだけのおもしろさは、主張のいかんにかかわらず、ある本ではある。