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by ST25
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 鈴木伸元 『加害者家族(幻冬舎新書、2010年)

 

 近代化された今の日本では犯罪者に対する私的制裁は禁じられている。それを頭では重々承知していても、どうしても犯罪者(主に故意犯)やその家族に対して行われるプライバシーの暴露や嫌がらせや解雇処分などの社会的制裁に対して溜飲が下がる思いを抱いてしまう。そんな野蛮な自分自身に対して嫌悪感を抱きつつも、それでも「犯罪者は自分で悪いことしたんだし・・・」という思いを拭いきれなかったりする。

 そんな割り切れない思いを少しは軽くし、自らを少し近代人にしてくれるのがこの本。

 犯罪者の家族に関して、有名事件の家族のその後、無名事件の家族のその後、ある殺人事件の家族になってしまった妻のドキュメント、日本の加害者家族支援の現状、加害者家族支援に関する先進的な仕組みを持つ外国の状況などが書かれている。

 特にさまざまな実例をたくさん挙げてくれているのがいい。

 宮崎勤の父が自殺したとか、林真須美の自宅がさまざまに落書きをされた上、放火されたとか、加害者家族が何らかの嫌がらせを受けたり、苦しんだりしているというのは知っているつもりではあった。

 が、実際に起こっていることは想像を超えていた。頭で知っているというのと実際のエピソードをドキュメントの形で読んで知るというのは、大きく違っていた。

 それまで普通に生活していた妻が急に犯罪者の妻として世間から厳しい視線や扱いを受けなくてはいけなくなる。子供がいる場合には急に犯罪者の子供というレッテルが張られいじめを受けたりする。これでは、ある意味では妻や子も被害者になっているとも言える。犯罪を犯したのは当人であり、その責を負うべきは当人であって、家族ではない。

 そんな当たり前なことをリアリティを伴って教えてくれる。ジャーナリズムの力をいかんなく発揮してくれている。ちなみに、犯罪などに関するジャーナリズムの暴走については『報道被害』(岩波新書)がこの本と同様にリアリティを伴ってその酷さを教えてくれた。



 しかしながら、確かに、犯罪を犯した当人が責任を負うべきであるとはいえ、少年犯罪における親のように家族に他のやり様があったのではないのかと思えることもないではないだろうから、完全に近代人にはなりきれない野蛮な自分が残っていたりするのも事実だ。



 それにしても、子育てに正解があるわけではないし、周りから見たらすべきでないことも当の親からしたら正しいと信じていたりする場合もあるし、犯罪に限らず、勉強であれ、しつけであれ、「親の責任」というのは一筋縄では語りきれないものだ。




 
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