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 デイヴィッド・プロッツ 『ノーベル賞受賞者の精子バンク(酒井泰介訳/ハヤカワ文庫NF、2007年)
 
 
 ノーベル賞受賞者精子バンクの歴史やそこに関わりのある人たち(創設者、ドナー、レシピエント(母)、その子供など)を取材して、その真実を描いたノンフィクション。

 文庫版の副題「天才の遺伝子は天才を生んだか」、あるいは、帯の宣伝文句「現代の優生学から誕生した200人以上の子供たちはいま?」という内容を期待して読むと落胆する。その話は全体の1割程度しか出てこない。( 編集者 and/or 早川書房はこの本の内容を理解できなかったのだろうか? and/or そんなにお金がほしいのだろうか? 2007年を象徴する一字は“偽”らしいけど・・・。)

 とはいえ、「 そういうのを使おうが/使うまいがすべて個人の自由だ 」と考える自由至上主義的な人以外にとっては、考えさせられる内容が多い。
 
 
 例えば、ノーベル賞受賞者のものであれそうでないものであれ、精子の提供は、子供を持ちたいけど持てない夫婦や女性のための、(例えて言えば、輸血みたいな)純粋な医療的措置だと想像していたが、そうなってはいない。そこには、“良いドナー”を求める以外にも、人間的な感情が入り込んでくる。

 母親は(いくつかの情報以外)匿名であるドナーのことを知りたく/会いたくなり、子供は精子を提供しただけの“父親”のことを知りたく/会いたくなり、精子を提供しただけのドナーは“子供”のことを知りたく/会いたくなる。( そして、この本では“夫婦”や“親子”が実際に会っている様子を伝えている。)

 父親とは誰か? 自分は何者なのか?(どこからきたのか?)

 そんな問いの答えが、意外にも「相対的であるかもしれない」と思わせる。
 
 究極的には、ここで出てくる問題は、主観的な見方と客観的(科学的)な見方とが分裂していること、に端を発しているように思う。

 “主観的に父親だと思ってた人”と、“客観的(科学的・生物学的)に父親である人”。

 どっちが“父親”だろうか? どっちも“父親”だろうか?

 あるいは、自然的感情であると思われている「親への愛情」は、血のつながりによって生まれるものなのだろうか? 主観的に親だと思っている人に対して生まれるものなのだろうか?

 「主観が重要」か、「客観(科学的事実)が重要」か?

 これは、(この本ではほとんど明らかにされていない、)「人間はどこまで遺伝子に規定されるのか?」(環境か遺伝子か?)、という永遠の論争テーマにもつながってくる。

 人間が遺伝子にある程度規定されているのは間違いない。でも、何がどこまで規定されるのか? 遺伝子は愛情の対象にも影響を与えるのか?

 ・・・などなど、疑問が尽きない。

 と、なんともまとまりのない感想ではあるけど、そんな難しい問題を考えるための、現実を知る1つの参考資料として、この本は有意義である。
 
 
 ところで、アメリカの精子バンクの顧客は、まず、不妊である夫婦、それから、未婚の女性や同性愛者の女性である。

 そして、この状況の想定される帰結として、(優秀な女性の)“卵子バンク”なるものまですでに登場してきているとのことである。

 朗報! これに代理出産をあわせれば、独身男性でも血のつながりのある自分の子供が持てる!!!

 男女、未婚既婚にかかわらず、人たるもの、すべからく子供を持つ権利を有しているのだ!!!

 あっ、でも、精子/卵子のドナーのプロフィールに偽りとか間違いがあったときにはクーリング・オフを認めてね♪
 
 
 ・・・カオス(特に自分の頭の中)。

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