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高山聖史 『当確への布石』 (宝島社、2007年)
2007年の「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞受賞作、に加筆したもの。
ワイドショーの人気コメンテーターである女性大学助教授が衆院補選に出馬し開票を迎えるまでの“過去”に絡んだ様々な事件を描いたミステリー小説。
謎や仕掛けは“質より量”で、一つ一つの質は低くてありがちなものにすぎない。けど、量は多い。
その結果として、完成度・満足度・満腹感は高くはないけど、気分転換用の読み物としてとかならある程度は楽しめる。
AmazonとかBooklogのレビューだと「選挙の描写はおもしろかった」というのがけっこうあるけど、多少なりとも選挙や政治のことを知ってる人間にとっては、目新しさもおもしろさもない。むしろ、ベタすぎて現実よりつまらないとさえ言える。
政治家はとりわけ、自分のことを大きくおもしろく語ろうとする人種ではあるけど、政治家の自伝とか伝記にはもっとおもしろい逸話がいろいろ書かれてたりする。
それから、こんなことはいくらなんでもあり得ない、と言わずにはいられないのが次のところ。原因と結果を取り違えている。(そして、真の原因を見逃している。)
「 この層〔=都心の有権者〕には、浮動票と同じ反応をする有権者が多いともいわれている。ゆえに、野党第一党支持であった有権者が、その選挙の流れを判断し、与党公認候補へ票を投ずることもあり得る場所なのである。 」(p170)
著者がそんなに政治のことを調べてないことが伺える。
そんなわけで、(謎、仕掛け、選挙描写、下調べ、等)全体的に浅くて薄い、特筆に価するような作品ではない。
ただ、当初の安易な思い込みを裏切るタイトルの付け方はうまい。