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by ST25
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 野村克也 『野村ノート(小学館、2005年)
 
 
 野球、組織、リーダー、人間、人生、哲学などに関して、「野村ID野球」の包括的なエッセンスが開陳されている本。実際の有名選手の分析・評価もところどころで明らかにされている。なかなかおもしろい。ここまであらゆることを考え抜いている人は、野球界はおろか、企業界においてもあまりいないのではないかと思える。そして、野村監督の野球界のレベルアップへの貢献の大きさがよく分かる。

 
 
 自分が読み取った野村ID野球の基本は、「しっかり筋道を立てて考え、基本・基準・理念を築き、それに従ってやって失敗・敗北したのならそれは仕方がない」ということなのではないかと思う。(もちろん、これが全てではないが。)
 
 
 ただ、これは大枠であって、やや具体的なレベルでの野村監督の理論は大まかに二つに分けることができると思う。野球論(野球技術論)と人間論である。もちろん、野村監督の理論では人間論も野球に必要不可欠だということになる。

 ただ、二つを分けて考えた方が便利だ。

 というのも、野球技術論に関しては“大筋では”誰もが賛同するだろうからだ。いまどき、精神論や感覚ばかりの「解説者」や「指導者」は問題外だ。(現実にはかなりたくさんいるのだが・・・。)したがって、こちらに関して議論があるとすれば、かなり細かい技術論になるだろう。

 一方で、人間論(及び、それから導かれる野球スタイル)に関しては総体的なオルタナティブがありうる。野村監督は規律や指導・監督を重んじる立場からの人間論・野球スタイルである。これに対して最も対照的なのが、バレンタイン監督を代表とした自由や自主性や褒めることを重視する人間論に基づいた野球スタイルだ。

 思うに、両者の違いは、“人間の弱さ”を「否定して、強くする(無くす)」のか、「肯定して、利用・昇華する」のか、というところに根源的にはあるのだろう。

 いずれにせよ、バレンタイン監督は野村監督とはスタイルが違うが、それでいてデータ等も重視するだけに、野村監督と堂々と渡り合えるカウンターパートになりうる。

 もちろん、どちらがより優れているということはなく、チームの状況などによって適性がある。ロッテみたいな若いチームにはバレンタイン流が有効であろうし、ある程度、形が決まっているチームには野村流がより効果的だろう。

 こう考えると、バレンタイン監督に近い野球スタイルの原監督率いる巨人が今シーズンどこまで健闘できるかは、どれだけ若々しい活力あるチーム編成ができるかにかかっている。その点、清原、江藤などの重量級を放出したのは良い兆候の一つではあるだろう。ただ、そもそも、野村監督やバレンタイン監督のように原監督がどこまでデータ等を有効利用するかはやや疑問だが。

 そして、野村監督率いる楽天は今期どこまで戦えるか。確かに、楽天はベテラン選手が多く、この点では落ち着いた野球をする野村監督は適している。しかし、昨年を見る限り、主軸やエースや打順や守備の定位置などが固まっているとは言い難いため、一からチームを作っていかなければならない。この点では野村監督のやり方だとすぐに上位に来るのを期待することはできない。個人的には、後者の弱点は大きいから今期もこれから数年も楽天は苦しむだろうと思う。ただ、チーム形成の初期に野村ID野球の芽が蒔かれるというのはチームの将来にとっては大きな財産となるだろう。
 
 
 ところで、細かいことだが、野村監督の指導で一つ気になっていたのが、長髪・髭などの禁止である。あれだけ勝つために合理的な考えをする人が野球とは関係のなさそうなものを禁止する行為が今まで理解できなかった。この本でその理由が書かれていた。すなわち、「野球を見る側の人たちが不快に感じるから」というのがメインの理由であるようだ。しかしそうであるなら、これらの規律は時代拘束的なものであって、野村野球の核心や哲学とは直接的には関係ないと見るべきだろう。精神論だけの古い「野球指導者」が歪曲して部分的に恣意的に利用することを危惧する。
 
 
 
 それにしても、このような合理的な野球指導者が比較的古い世代の中から出てきたのは、不思議であり、奇跡でもあると思わずにはいられない。

 そして、このような本を小中学生などの若い野球少年が広く読めば、将来、野球界のレベルは飛躍的に向上するのではないかと期待できる。
 
 
 
 本の具体的な中身とはあまり関係ないことばかり書いてきてしまったが、一つには、それだけ野村監督の理論が包括的でまとまっているためであり、もう一つには、細かいところではおもしろい内容がたくさんあるために一つか二つだけを取り上げるのが難しいためである。

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