by ST25
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村上春樹 『海辺のカフカ(上)・(下)』 (新潮文庫、2005年)
閉じた世界。 それは閉鎖的な世界ではない。 円環的な世界のことだ。 つまり、空間的に、ではなく、時間的に閉じた世界だ。
抜け出せない円環。 抜け出せない定め。 日々の退屈な日常という円環。 学校、あるいは、会社で。 猫を殺し続けるという円環。 そして、母・姉と交わり父を殺すという定め。
その世界では、身体から離れた人々の魂が、行き交い、惑わし、誘い、導く。 あるいは、実体とは別の観念的客体が実体を装って、行き交い、惑わし、誘い、導く。
閉じられていない、永遠の別世界(ユートピア)へ逃げ出すことへの誘惑もある。
しかし、「 世界でいちばんタフな15歳 」になると決めた少年は、自らの力でその閉じられた円環の中で生きていく強さを身に付ける。 そして、その閉じられた円環は、『地獄の黙示録』でウィラード大尉がカーツ大佐を殺したように、鉈(なた)のような大きな包丁で断ち切られる。
傑作。
話としてもおもしろい上、内容的な深みもある。
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