by ST25
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川上未映子 『わたくし率 イン 歯ー、または世界』 (講談社文庫、2010年)
芥川賞候補になった表題作の中篇と一つの短篇を収めた本。
表題作は、虫歯になったことのない、体で一番硬い奥歯に自我を見出した女性が、恋をし、未来の自分の子供に宛てた手紙を書く。 しかし、終盤、恋も完全に頭の中での妄想であったことが明かされる。 こうして、強い自我を求めた弱い女性は弱い人間らしい結末を迎える。 そして、そこから一歩踏み出したところで物語は終わる。
昔であれば生死をかけて悩みぬいたであろう自意識の問題をふざけた感じで小説にするのはいかにも現代的。 ただ、その主題、表現方法、物語の展開と、どこを取っても特に特筆するようなところはない。 特に、前半で情報を与えず、後半になって唐突に 「 実はこうだったんです・・・」 的な暴露で物語を展開させる手法は稚拙。
一緒に収録されている短篇 「 感じる専門家 採用試験 」 の方は、妊婦、主婦の生活を、滑稽で独創的な言葉や視点で、それにもかかわらずリアリティを持って、紡いでいっていて、なかなかおもしろかった。
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