by ST25
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大江健三郎 『美しいアナベル・リイ』 (新潮文庫、2010年)
3年前に出版された『臈たしアアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』が改題・文庫化されたもの。
ポオの詩に登場する純粋無垢な少女アナベル・リイ。 そして、クライストの『ミヒャエル・コールハースの運命』を基にした民衆の純粋無垢な力のたくましさを描く映画。 歳を重ねた2人の男が、もはや取り戻せない純潔さにもう一度接近すべく、アナベル・リイを思わせる美しき国際派女優を主人公に、「ミヒャエル・コールハース映画」を制作しようと計画する。
しかし、その純潔や憧れの脆さや儚さのままに、その計画は頓挫して( or 外国人によって凌辱されて)しまう。 その後、登場人物たちは、大きな夢を追うのではなく地道に純潔を回復しようと各々が努めていくことへと方向転換していく。
純潔なものへの憧れと、その儚さ。 その壊れ方のあっ気なさ。 そして、それを壊す粗暴なよそ者。
派手さはないながらも、とても雰囲気があり、ささやかに(うるさくない程度に)批評性も含んでいる小説。
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