忍者ブログ
by ST25
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 塩野七生 『ローマ人の物語8 ユリウス・カエサル ルビコン以前[上](新潮文庫、2004年)
 
 
 司馬遼太郎作品と並んで絶賛と批判のある、言わずと知れた歴史小説(の中の一冊)。

 ちなみに、歴史学的な評価は小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP新書)で簡単に触れられている。
 
 
 この文庫版第8巻では、世界史に残る指導者ユリウス・カエサルが活躍し始めるまでの生い立ちや時代状況が描かれている。

 だから、まだ激動のドラマは展開されていない。

 そんな現段階では、主役のカエサルより、弁論術でのし上がったキケロの方が魅力的に見える。

 とはいえ、ここまでのところから見て取れるカエサルのすごいところを一つ挙げると、公私混同のなさ。

 巨額の借金をしたり、あらゆる女性と付き合ったりと、私(的な)生活では豪胆なのだけど、公的な場所ではカティリーナの処遇に関する演説に典型的なように、実に理性的。

 公私の利害を混同させないと言うより、公私の判断基準を混同させないとでも言うべき性質。

 まさに偉大な政治家。
 
 
 
 ところで、歴史小説は確かにおもしろいのだけど、自分はどうも全面的には好きになれない。というか、入り込めない。

 歴史小説がエンターテインメントの読み物として割り切られているのならばいいのだけど、ノンフィクションを装う限り、好きになれない。

 歴史小説は、大抵、英雄史観で書かれている。

 だけど、事実である歴史を、自分たちの良いように楽しくかっこよく書き直してそれをノンフィクションだと見なすという行為は、保守派による歴史(再)解釈と同じにしか見えない。

 歴史に学ぶことが重要ならば、それこそ、緻密に学問的に書かれた歴史書から学んだ方がより有効な勉強ができる。

 それに、天才に学ぶより、凡人とか、経済史、社会史、技術史とかを学んだ方がよっぽど今に活かせる。

 繰り返すけど、ノンフィクションを装うから嫌なのであって、読み手・書き手の意識が「所詮は読み物」というもっと割り切られたものになれば全く問題はないと思っている。

 ちなみに、付け加えれば、英雄史観を排除しても、歴史のダイナミズム(因果連関みたいなもの)は失われないから、無味乾燥な歴史にはならない。



〈前のブログでのコメント〉


     たしかにカエサルは偉大すぎますが、カエサル以外の人物とカエサルの対比が自分にいかせますよ。

     女に狂ったアントニウスなど(笑)

commented by やっさん
posted at 2007/01/24 00:40 

それは、歴史上の人物から学ぶべきことなんでしょうか???(笑) 
commented by Stud.◆2FSkeT6g
posted at 2007/01/24 01:32
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新コメント
[10/20 新免貢]
[05/08 (No Name)]
[09/09 ST25@管理人]
[09/09 (No Name)]
[07/14 ST25@管理人]
[07/04 同意見]
最新トラックバック
リンク
プロフィール
HN:
ST25
ブログ内検索
カウンター
Powered by

Copyright © [ SC School ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート and ブログアクセスアップ
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]