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 吉田豪 『元アイドル!(ワニマガジン、2005年)
 
 
 新田恵利、伊藤つかさ、いとうまい子といった80年代に活躍した元アイドルから、細川ふみえ、吉井怜、藤岡麻美といった比較的新しい元アイドルまで、総勢22人の元アイドルにアイドル当時の本音を聞いたインタビュー集。

 
 
 この本を読んでまず気になったのが著者=インタビュアーについて。

 この本に記載されているプロフィールによると、著者は「プロ書評家/プロインタビュアー」とのことである。この本を読んだ限り、確かに形式概念としてなら「プロインタビュアー」という肩書きはありうるが、実質概念としてはこの肩書きは適切ではないと思った。著者のインタビュアーとしての問題点はいくつかある。

 一つ目は、この本を読んでいると、インタビュアーと元アイドルのどちらの発言だか分からなくなって、頻繁に発言者を確認しなければならなくなること。話の導入とか補足とかにおいてインタビュアーが色々詳しく述べるのはいいのだけれど、話が結構進んでいるときにインタビュアーが元アイドルが感じたであろう感想などを先に言ってしまうのは問題だ。自分の中で勝手に物語を作ってそれに無理やり元アイドルを引き込もうとしている強引さが感じられる。相手の記憶や感情を“引き出す”のが実質概念としてのプロインタビュアーの仕事のはずだ。

 問題点の二つ目は、著者のボキャブラリーや物事への感想が貧困であること。それが顕著に現れるのが元アイドルが書いた自伝的な著書への感想を述べているところ。二箇所ほど引用しておこう。

官能的私小説『蒼い告白』(矢部美穂著)、最高でした!(p19)

細川(ふみえ)さんの告白的私小説『万華鏡』、最高に良かったですよ!(p45)

 その酷さは説明するまでもないだろう。図らずも「プロ書評家」という肩書きの不適切さまで自ら暴露してしまっている。
 
 
 そんな著者の良いところを一つ挙げれば、インタビューをするにあたって最低限の準備をしっかりしてきているところが挙げられる。こんなことさえできていないインタビュアーや記者をしばしば見かけるお寒い現実からすれば、この点は誉められるべきところに入ると思う。
 
 
 
 さて、周辺的な話が続いたが、本筋である元アイドルが語っている内容に話を移そう。

 そもそもインタビュー対象に選ばれている人たちはそれなりのエピソードや経歴を持っている人たちであることには注意が必要だけれど、それでもやはり、皆壮絶な経験をしていることには驚嘆する。

 特に、比較的古い元アイドルたちは色々理不尽な経験をたくさんしてきている。比較的新しい元アイドルの場合だと、芸能界での辛い経験といっても、グループ内の他のメンバーやアイドル仲間からの妬みや嫌がらせくらいなものがほとんどで、重くても家族に関する問題である。それに比べて、比較的古い元アイドルだと、大人たちからの様々なハラスメント、人間の限界を超えるくらいの強制労働、労働に見合うどころではない赤字な給料、頭のおかしいファナティックなファンからの迷惑行為など、無秩序な芸能界ならではの理不尽な経験をたくさんしている。

 思えば、芸能界は無法空間である。普通のサラリーマンより流動性のかなり高いプロ野球界でさえ、雇用等に関しては(年報の下げ幅など)最低限のルールが存在している。芸能界は、選手が数の限られた球団のどれかに所属しているプロ野球界より流動性が高い。しかも、芸能界はほとんどの人の場合、買い手(=使い手、雇用者、番組制作者、芸能事務所など)市場であって、ほとんどの芸能人は絶対的な弱者である。にもかかわらず、芸能界には大したルールがない。

 芸能人たち(弱者を中心に)は労働組合のような団体を結成すべきだろう。そして、厚労省や日弁連は芸能界の惨状にもっと注意を払うべきだろう。パワハラ、セクハラの蔓延する野蛮地帯に文明の光を与えんことを。
 
 
 それから、この本を読んで改めて感じたのは、芸能事務所およびマネージャーというのは本当に昔からろくなことをしないということ。それでも最近はまだましにはなってきたのだろうけれど、依然として、なぜか売り出す側がアイドルの活躍や人気にマイナス効果しかないようなことを平気でやっている。まあ、これは他の民間企業でも言えることだろうが。
 
 
 
 そんなわけで、読んであまりいい気分のしない本であった。



〈前のブログでのコメント〉

アイドル専門の弁護士に立候補いたします!
commented by やっさん
posted at 2006/03/13 20:23
被選挙権を得てから言って下さい。
commented by Stud.@Webmaster
posted at 2006/03/13 23:55 
ならアイドルを支持母体に立候補。
commented by やっさん
posted at 2006/03/14 13:23

衆議院の方は私目がすでに推薦を受けておりますので、参議院に回って頂くことになりますが、よろしいですか?
commented by Stud.◆2FSkeT6g
posted at 2006/03/14 17:02 
参議院全国区やないと勝てんでしょ~
commented by やっさん
posted at 2006/03/14 21:59

「新党アイドル」は、衆議院では比例東京ブロックでの一議席を、参議院では比例全国区での三議席、および比例東京ブロックでの一議席を目指しております。この斬新さは既成政党や地方では受け入れられそうもないので。また、「自由連合」との連携も視野に入れております。
commented by Stud.@Webmaster
posted at 2006/03/14 23:35
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