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「奇跡の扉TVのチカラ」編 『生きたい――生命のタイムリミット 17歳少女の闘病ドキュメント』 (tv asahi、2006年)
心臓移植しか生きる道が残されていない少女が海外で移植を受けるための募金をしていたところ、テレビ朝日の番組制作者がそれを見かけ、「奇跡の扉TVのチカラ」という番組で募金を呼びかけ、それによって海外で移植を受けることができ元気になった、という“感動の物語”、のはずが、そうでもない。
それは、ひとえにライターの文章があまりに幼稚なことによる。
まるで中学生がちょっと大人ぶって書いた感想文みたいな感じなのだ。もの凄く重い出来事に対する切り込みが表面的すぎる上、ボキャブラリーも貧困。「民放のテレビ番組をそのまま本にした感じ」と言えば想像してもらえるだろうか。
また、それに拍車をかけるのが登場人物の浅はかな発言の数々。
例えば、東京女子医大の川合明彦医師の次の話。
「 川合医師は、移植医療は「マイナス1+1=ゼロ」と考えている。一人は亡くなっても一人は助かるからプラスマイナスゼロ。
しかし今の日本のように臓器提供と移植医療の進まない現状では、「(マイナス1)+(マイナス1)=マイナス2」 」(p211)
この論理で行けば、1億円かけてアメリカで臓器移植して1人を助けるよりは、この1億円で最貧困国の数万人を救うべきだということになる。
この医師が海外で臓器移植を受ける少女の主治医なのだから恐ろしい。
しかし、いずれにしても、いつ死ぬか分からない、病院で寝たきりの少女が、普通に学校に通えるようになったという“事実”に対しては感動を覚える。