by ST25
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NHKスペシャル取材班編著 『日本人はなぜ戦争へと向かったのか――メディアと民衆・指導者編』 (新潮文庫、2015年)
この「メディアと民衆・指導者編」では、まず第1章で「メディアと民衆――“世論”と“国益”のための報道」として、取材班による概要と3人の専門家へのインタビューが収められている。販売部数などの経済的な利益に惹かれ、また、政府・軍部による圧力により、戦意高揚を助ける報道を続けたメディア。メディアの影響もあり強硬な路線へと惹かれる国民世論。その世論に迎合するメディア・・・。悪者は誰だという感情論に傾くことなく当時のメディアと国民と政府・軍の相互作用を詳らかにしていて勉強になる。また、ラジオでは名演説家・永井柳太郎の演説が聴衆の熱気とともに放送されていた。たとえ内容が同じであっても、それを文字で読むのと耳で聞くのでは受け取られ方も大いに異なる。活字メディアではないが故の特徴、すなわち、感情によりダイレクトに訴えるという特徴を有するラジオが戦意高揚に果たした役割の指摘も、個人的には新鮮で面白いと感じた。
第2章では「指導者――“非決定”が導いた戦争」と題して、取材班によるまとめと3人の専門家へのインタビューが収録されている。首相や軍部大臣など指導者たちが自身の責任に帰せられることを避け、それが故に、ネガティブな情報は隠匿され、決断を誰も行わない。こうして誰も何も決定することなく、非決定のまま戦争へと突き進んだ過程が個人名や証言なども挙げた上で具体的に語られている。この点に関してはかねてよりしばしば指摘されてきていて、新鮮な面白みは特に感じなかったが、日本人にとって忘れるべきでない大切な点だ。ちなみに、この日本的組織や日本人(日本的組織人)の問題に関しては別巻の「外交・陸軍編」にも詳しい記述がある。
さて、ここで翻って現代の日本を顧みるに、ワンフレーズポリティクスが話題になり、自らの主張のためなら疑わしい根拠やすかすかなロジックに基づいた言説を平気で吐く議員が跋扈し、無責任な対応をして手厳しい批判を浴びる企業が後を絶たない。戦争を避けるために戦争反対を叫ぶことも無駄ではないのだろう。けれど、果たして、その行動はどこまで理性的なものなのだろうか。あるいは、どこまで真摯なものなのだろうか。もし仮に国民の8割が「戦争やむなし」の意見を持つようになったとき、「戦争反対の叫び」は果たして戦争を止めることができるのだろうか。叫ぶだけで止められるほど戦争は(戦争へと至る道は)単純なものなのだろうか。先の戦争を学び、その教訓を導き、それを今に生かしていくことは、本来まず当然のこととして行われるべきことだろうと、自戒の念も込めて、思う。
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