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森田朗 『会議の政治学』 (慈学社、2006年)
政府の審議会に何度も参加してきた行政学者が、審議会の実態に関するあらゆることを詳(つまび)らかにしている本。
昨日取り上げた『ネット時代の反論術』が“日常での議論術”であるなら、今回のは“オトナの議論術”。
第1章で「会議の政治学」として審議の実態が、第2章で「会議の行政学」として事務局(省庁)の暗躍が、第3章で「会議の社会学」としてマスコミの取材の実態が取り上げられている。
具体的には、委員のタイプ分け、スケジュールの決め方、意見主張のテクニック、議事録の直し方など、かなり細かい(が、政治的でおもしろい)ことまで書かれている。
審議会の座長も務めるような、審議会の主流派のインサイダーがここまで書くか!と驚くくらいに色々なことが明かされている。
もちろん、新聞の政治面や週刊誌の関連記事などを読んでいれば、ある程度は想像がつく内容ではあるけれど、やはり信頼できる内部の人間がまとめて書いているというのは、事実認識を形作る上で大きい。
しかも、しばしば批判を浴びる事象も、(全て肯定しているわけではないが)それなりの合理的な意味があるという観点から説明されているから、外部の人間からすると不可解で不透明に見える事象を理解するのに役立つ。
ただ、やや教科書的な記述の仕方であるから、猪瀬直樹の『道路の権力』を併せて読むと、よりリアルに「審議会とはどういうものか?」、あるいは、「オトナの議論とはどういうものか?」を理解できるだろう。
特に教育再生会議の注目メンバーは2冊とも必読。読んどかないと、官僚の言いなりか、意見が何もまとまらないか、というどっちにしても意味のないことになりかねない。(個人的には、余計なことをするよりはその方が良いと思っているが。)
ところで、著者は「あとがき」で次のように言っている。
「 著者としての見解を述べれば、本書で書いたことは、会議運営の技法としては、まだ初級か、中級程度の内容である。まだまだ上級の技はあるのであり、奥は深い。上級編については、私がもはやそのような委員を引き受けなくなってから発表したいと思っている。 」(p182)
なんとも思わせぶりな言い方だ。こう言われるとより一層興味が沸いてくる。
しかし、果たして、こんな本を書いた著者に今後も委員の要請はくるのだろうか?