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岡田憲治 『はじめてのデモクラシー講義』 (柏書房、2003年)
「市民」という言葉に主眼を置きながら民主主義の歴史や思想を説明している本。ちなみに、ここでいう「市民」とは「シトワイヤン」ではなく「ブルジョア」のこと。(だからといって共産主義に偏った理解・説明ではない。)
前半の中世から現代に至る西洋の政治史(市民史)の説明は簡にして要を得ていて分かりやすい。( 高校の世界史だと細かい人名とか年号に捕らわれすぎていて、より重要なはずのこういう大きな流れを理解できていないことが多い。)
ただ、後半の日本の(過去と現在の)話になると、前半では少しだった道徳的・俗説的な話がやたら多くなってきて、内容にまとまりもなくなり、読むに耐えなくなってくる。
道徳と俗説の両方が見事に合わさっている記述を1箇所だけ引用。
「 そもそも高度経済成長というものがどうして可能になったのでしょうか? 第一には、みんなが一生懸命働いたからです。戦争で荒廃した社会を復興させなければならないという強い気持ちも働いたでしょう。しかし、いくらやる気があっても人々の努力が効率的に動員され、かつ生産へと結びつかなければ、毎年十%を超えるような経済成長が可能となるはずがありません。そして、それを可能にしたのが国家の力でした。 」(p173)
経済学の知見を知らなすぎる。(今どきの学生の非常識をバカにする前に自分を恥じろ。)
全体として(「はじめてのデモクラシー講義」として)は、前半の歴史の説明は分かりやすいけど、今の実際の制度の説明もなく、不十分。それに、個人的見解も多数紛れ込んでいて、キャッチーなタイトルに見合った内容にはなっていない。