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by ST25
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 あれから3年。今考えると、あの時点での衝撃も相当大きかったのですが、その後の世界に与えた影響も非常に大きなものでした。そんな懐古的な気持ちで(だから今回は丁寧語!)、この日にあえてあの映画の感想を書こうと思います。3年前の記憶と3週間ほど前の記憶を辿りながら。
 


公開2日後に映画『華氏911』(M.ムーア監督)を、久しぶりに映画館まで行って観てきました。

 まず、この映画の謳い文句であるブッシュを告発するストーリーに関する感想としては、監督の自著『アホでマヌケなアメリカ白人』や、B.ウッドワード『攻撃計画』あたりを読んでいたため、1~2つのことを除いて目新しさはなく、物足りなささえ感じました。しかし、だからといって、このあたりの前提知識がないとブッシュ政権の“黒い関係”の話は分かりにくいのではないかとも感じました。ただ、そもそもこの点に関しては、人々をブッシュ政権の不支持に動かすほどの説得力には欠けているように思います。石油とか軍需産業とか巷に知れ渡っているもののブッシュ版で、ジョブの応酬といった感じです。

 そんなわけで、上の点よりもむしろ、この映画(というよりドキュメンタリー)の意義は戦争、死、セキュリティ、兵士、愛国といった内容について、現実に即しながらも“一般的に”、そして深く、考えさせるところにこそあると思います。したがって、この点からすると、「ブッシュの政策を支持するか、反対するか」についての判断は、これら戦争などについて深く再考させた後に視聴者に委ねられているのであり、必然的に反ブッシュに至らせる訳ではありません。事前の宣伝とは裏腹な、この反ブッシュでの一貫性の欠如、生ぬるさが、この映画の期待に対する失望や不満へとつながっているように思います。(だからといって中立に戦争等を描いているわけではない。つまり、戦争は戦争としてブッシュとはあまり結び付けずに描いている。)

 さて、ここで911以後の世界を冷静に考え直してみようと思います。そもそも9月11日に起こったテロというものはあの時あの場所にしか存在しないものであり、911それ自体が直接変えたものはWTCビルの消滅等限られたものです。この点では情報革命やイラク攻撃などが直接的に広範の人々の物理的生活を変えるのとは性質が異なります。つまり、「911以後の世界」とは、人々の911の解釈を介した上で、人々によって変えられた世界なのです。例えば、同じ事件やテロでも他のものと比べてみればこのことは明らかです。そして、そうであるならば改めて911について冷静に再考するのも意味のあることです。

 そこで911がそれほどまでに重要であるなら、「911の一体何が新しいのか?」を考えてみようと思います。アル・カイダという組織は911前からすでに活発に活動していました。テロという行為は古くから行われており、外国においてではあっても米国の大使館等が標的にもされています。米国の中枢部を攻撃するために何十年もかけて米社会に同化し信頼を得て米国内部から実行する可能性は常に存在しています。あるいは、(911と)同様のことを米国人が行おうと思えばより簡単に実行可能です。2億人以上いる米国人の誰もこんなことをしないと言い切れるでしょうか。このように考えてくると、911以前も以後もこの種の事件の可能性は常に存在しており、物理的な世界や環境は911以前も以後も変わっていないのです。そして、この種のものは今後も防ぐことも不可能だと言えます。

 '結局のところ、“このような悪事を起こす人がいるか、いないか”が全てなのです。'

 911以後の政治家や専門家は事あるごとに引照基準や正当化事由として911を持ち出します。それを受け入れる人々の側でも頭の中で暗黙の前提として911のような事態を想定します。奇しくも、911を過剰に利用しようとするブッシュを批判しようとしたムーアまでもが911を使ってしまい、人々の中の「911という基準」を再生産するのに寄与してしまっています。しかし、911が前述のようなものであるならば、引照基準として持ち出される911とは無内容な空虚なものなのです。

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