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 オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)』 (アンドリュー・ロイド=ウェーバー製作・脚本・作曲/ジョエル・シューマッカー監督)


 先週観てきた。形式的な誉め言葉としてではなく「すばらしい」という言葉がぴったりの映画。音と映像だけでかなり魅せられる。


 物語の重要なモチーフである「明と暗」、「光と闇」のコントラストが見事なまでに、音楽、歌、舞台(セット)、衣装で表現されている。また、小道具や場面転換の演出など細部に至るまで製作者の才能がにじみ出ている。これらが絡み合って観ている人を映画に引き込む。


 これら聴覚と視覚に訴えてくる「すばらしさ」には感動をおぼえる。安易な「物語」で感動を誘おうとするテレビ番組や映画が多い中、「音と映像だけ」で人々をこれだけ感動させるのは凄い。

 さて、いきなり話は変わるがこの映画であまり評判が良くないのはストーリーと字幕である。もちろん、音楽や映像にはこれらの気になる点を上回るに余りある良さがあるが。この映画みたいに音と映像が良い場合に誉める以外に書くことがあまりない。そこでよく否定されるこの2点について書いておく。


 まず、字幕だが、確かにこれは気になった。ただ、この映画はミュージカルのように歌が多用されているため、そもそも字幕には馴染まない。だからやむを得ないのかもしれない。日本の学校教育で英語を習ってきた自分としては、むしろ歌の場面では日本語の字幕より英語の字幕を出してくれた方が良かったかもしれない。しかしながら、そもそも英語を聞ければ問題は起こらないわけで、英語のリスニング力を身に付けたいと切に思うと同時に日本の英語教育を恨みたくなった。


 次にストーリーであるが、こちらも確かに、単純すぎである点や、人物の行動の一貫性が怪しかったりする点など気になった。しかし、ファントム(怪人)の悲壮感や醜態さは見事に描かれているし、共感もできる。例えば、「自己に対するコンプレックスが駆り立てる歪んだ醜い精神」というようなものは、自分はもちろんのこと、キムタクやイチローといった人たちまで誰にでもあるものではないだろうか。しかも、そんな(精神的に)醜いファントムが音楽の天才だという一見一貫しないかに思える設定も、逆に外面的には天才でるように見える人(=「明」)でもその内面では苦しんでいる(=「暗」)という人間のアンビバレントな奥深さを考えさせてくれる。


 この点で思い出すのが、寺島実郎が雑誌の連載「脳力のレッスン」で触れていたこの映画の作者アンドリュー・ロイド=ウェーバーの人生である。(※これは本になった『脳力のレッスン』にも収録されている。)ロイド=ウェーバーは、まさに“音楽の天才”で「現代のモーツァルト(だったかな?)」との呼び声も高いほどにその才能は評価されている。しかし、私生活では何度かの離婚をするなど苦悩の人生を歩んでいるのだ。


 こういう点を念頭に置きながらこの映画を観ると単純なストーリーと思っていたものもなかなか感慨深い「自叙伝」になる。




 さて、かような訳で、この映画を観終わった後は映画の中の世界に完全に引き込まれた状態になる。そして、その余韻をいつまでも心の中に止めておいて楽しみたいと感じる。これを実行するには、映画を観終わってすぐに地上の明るいところに行かずになるべく暗いところに止まるのがいい。



〈前のブログでのコメント〉
パッチギは二回見ました。(笑)
落涙を禁じ得ませんでした。
傷ついて、傷ついて、傷ついて、
絶望の彼岸=和解に辿り着くということですね。
アイロニーです。

日本の映画会社は興行がヘタクソだ。
というのは映画評論をみると結構言われてますね。
井筒はリュックベッソンを超えたか?!
commented by morita
posted at 2005/03/23 17:38
 珍しく「英語を学んでいるキャラ」ですか(笑) ちなみに、DVDだと音声・字幕ともに英語と日本語があるので、最初は日本語で観て、2回目は英語の音声&字幕で観るということが可能です。無理をなさらず文明の利器をご利用になることをお薦めします。

 「パッチギ」は単純に宣伝が少なくて知名度が低いのからではないでしょうか?? この間、「ごきげんよう」に井筒監督が出てましたが。
commented by Stud.
posted at 2005/03/23 00:19
その映画にそのような意味があるとは、まったく気づきませんでした!!
一回も見たことがないので見てみようと思います。

英語を学ぶ学徒として、英語版で見てみようと思います。
物語の大筋(ピンチになったが解決)を理解するほどの英語力は持ち合わせておりますので、楽しめるかは別にして、結論はわかりそうです。

邦画もいいですよ。パッチギはなぜあんなに人気がないのか信じられません。
そこから、人気がないのが真実でないとの推論が導かれます。
Moritaさんもパッチギは面白いですよ。
例外を除けば、映画史上最高の作品であると断言できます!
commented by やっさん
posted at 2005/03/22 22:24
 コメントありがとうございます。

 『インデペンデンス・デイ』(以下ID)はとても大好きな映画です(笑) moritaさんは藤原帰一と同様、IDにおいてアメリカが中心になって地球外生命体を攻撃するという構図を、アメリカによるイラク攻撃に擬して考えているようですが、この映画は、(アメリカ映画であるという事実からアメリカが中心になるのは避けられませんが、)他の国や地域、人種や民族に注意深く気を遣っています。この点に注意を払うとIDのメッセージはむしろイラク攻撃などの一連のアメリカの単独行動主義を批判するであろうものです。換言すれば、世界内での国家や民族の“無連帯”に原初の問題意識があるということになります。(これが一般的なIDの理解です。)

 この点はこの映画の“一番の見せ場”である7月4日の朝の大統領の演説の中のところどころに象徴的に表れています。3つほど挙げてみます。

1.「We can't be consumed by our petty differences any more.」
 思えば、この映画では重要な役に政治的な配役がなされています。例えば、命をかけて地球外生命体の母船に飛行機で突っ込むのは、仕事では失敗ばかりで息子や周囲の人から呆れられている(たぶん)ヒスパニック系の労働者です。また、パイロットとして大役を果たすのは黒人です。

2.「We will be united in our common interest.」
 この点も重要です。この映画でアメリカが中心になって守ろうとしているのは地球の平和、あるいは地球そのものです。IDの第2弾として作られた映画「デイ・アフター・トゥモロー」が地球環境問題を人類の“敵”としている点も併せて考えるべきです。

3.「Today, we celebrate our Independence day!」
 このセリフがこの映画の文字通りメインでしょう。確かにアメリカの独立記念日を世界の独立記念日としてしまうという点には批判もありえるでしょう。しかし、これがアメリカ映画である点や、逆に世界的な“記念日”がそもそも存在しないこと、それから今まで述べてきたこの映画の趣旨からして、この文章は素直にコスモポリタン的な意味と解すべきでしょう。

 以上、長くなりましたが自分の好きな映画だったもので頑張って擁護してみました。

 それにしても「アメリカ嫌い」という意味不明な言葉が流布しているのは困りものです。「アメリカ」について「好き嫌い」と言うときは、アメリカのどの部分について言っているのか明確にするべきです。

 ちなみに、私は「文化」は政治的、作為的なものではなく自然的形成物であるべきだと思っていますので、素直に「アメリカ文化(特に映画)」は結構好きです。
commented by Stud.
posted at 2005/03/22 20:29
アメリカといえば、インディペンデンス・ディを最近初めて見たんですが、シナリオと芝居に失笑してしまいました。でも、宇宙人は人ではないので、人権的にも粉砕してもいいと僕は思うんです。(笑)ま、その裏にある思想はアノミー⇒陰謀論⇒アメリカ保守化=世界警察の思想でしょうが。(なんとわかりやすい~)アメリカといえば、前に筑紫哲也が『アメリカ文化好きなんですよねー』なんて言ってて『基地に否定的なお前が何を言うとるんじゃ』と思った訳ですが、実は矛盾していないんですよね。というのはアメリカ的=自由民主主義という構図で、それを徹底することでアメリカを追い出せ!という話が成立します。筑紫がどういう意図で言ったのか知りませんが(知ったこっちゃないですが)、僕ならそう考えます。ということでイメージを含めたアイロニーとして(笑)私はアメリカ文化は結構好きです。
commented by morita
posted at 2005/03/22 04:00
観てないです。というか、宣伝とかも(多分)あまりやってないのでよく知らなかったです・・・。個人的にはアメリカっぽい映画が好きです。日本映画は映画館でなくてもいいかな、と。ていうか、映画1800円は高すぎ。
commented by Stud.
posted at 2005/03/21 19:13
パッチギは見ました?
かなりお薦めです。素晴らしいかったですよ~
commented by やっさん
posted at 2005/03/21 12:54
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