by ST25
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中野雄 『丸山眞男 人生の対話』 (文春新書、2010年)
丸山眞男に心酔している音楽評論家が、今はなき師匠・丸山眞男との交流を懐古的に綴っている本。
様々なエピソードを通じて明らかになるのは、自身の体を蝕む病までをも対象にしてしまう飽くなき好奇心、具体的事例から瞬時のうちに一般論を引き出す抽象化力( ウェーバー的、社会科学的思考法 )、誰でも家に上げて話し込んでしまうほどの話好き、といった丸山眞男の圧倒的で魅力的な個性。
そして、高度成長を予想できなかったり、期待した労働組合に裏切られたり、といった厳しい現実にのまれる分析・評論の天才の悲哀。
それらが、「精神の貴族性」を説いた人物の弟子らしい、落ち着いた筆致で綴られる。今はなき古き良き時代を穏やかに淋しさもたたえながら振り返るあたりは、四方田犬彦の『先生とわたし』(新潮文庫)と似た雰囲気が漂う。
素直に羨ましく思う気持ちがある一方、なんとも浮世離れした温い世界での話ばかりなところに( おそらく妬みも重なって )苛立ちの気持ちも湧き起こってくる。
けれど、読み物としてはやはりおもしろかった。
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