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スディール・ヴェンカテッシュ 『ヤバい社会学――一日だけのギャング・リーダー』 (望月衛訳/東洋経済新報社、2009年)
社会学者である著者が、シカゴ大学近くのギャングが支配するコミュニティに入り浸り、ギャングのリーダー、その手下たち、ホームレス、売春婦、ヤク売り、自治会長、住民、警察などが作り出す一般世間とは全く異なる「別世界」の様子を、彼らと交流を深めていき、生々しくレポートしている本。
そこでは、ケガ人が出て救急車を呼んでも来てくれないし、警察は来たとしても住民たちから金を巻き上げに来るぐらいなものという、日本に住む者からするとにわかには信じられないような現実が繰り広げられている。
そして、政府や警察や法律の代わりにそこを支配しているのがギャングたちだ。 彼らは、ホームレスや非合法な商売をしている人たちや不法占拠の人たちを含む「住民」たちから「税金」のようなものを強引に集め、その代わりに(ということになるのだろう)、そのコミュニティの最低限の秩序を保っている。 例えば、売春婦が立っていい場所を決めたり、売春の客が金を払わなかったら痛い目にあわせたり。
とはいえ、もちろんそこはギャングだけあって、ただでさえ貧しいそこの住民たちに対してでも、慎みや情けのようなものはほとんどない。
その他にも、生きることに必死なために起こるかなり利己的な行動があったり、その一方で住民同士の助け合いがあったり、かなり過酷で悲惨な環境下での様々な人間模様が繰り広げられている。 そして、登場する一人一人に様々な人生経験や考え方があったりする。 そんなことも筆者との交流の中で語られている。
そんなわけで、読み物としてもおもしろい。
そして、もちろん、アメリカの現実、政府のガバナンス、権力というもの、人間というものなど色々なことを教えてくれるという点でも、とても興味深くておもしろい。