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 五百旗頭真 『日米戦争と戦後日本(講談社学術文庫、2005年)
 
 1989年に出版され、吉田茂賞を受賞した単行本の文庫化。日米開戦から戦後復興までの日米両国の動きを当事者の人物描写を中心に描いている。電車の中で読むために買ったのに、少しだけと思って家で読み始めたらおもしろくて最後まで読んでしまった、というよくあるエピソードを生じさせてくれる、とても読ませる本。

 筆者も「あとがき」で書いているように、この本は「原資料に基づく詳細の実証」というより、「系統立った解釈による全体像の提示」を意図しているため、たくさんの逸話や心情解釈などが盛り込まれていて、学問的な緻密さ・厳密さはない。けれども、その分読み物としてのおもしろさは格段と高くなっている。ただ、筆者自身は歴史(政治史)研究者であるだけに、事実関係についての記述における信頼性は巷に溢れる歴史物に比べれば十分なほどに高いと考えられる。また、筆者による歴史や人物の解釈も事実に基づいた推測や判断であるだけにイデオロギッシュではなくバランスの取れたもので、心を乱さずに読み進めることができ、こちらも信頼が置ける。

 中学生・高校生はつまらない教科書ではなくこういう本を読んで冷静だが活き活き描かれた歴史を学ぶべきだと思う。そうすれば、偏狭な歴史観や古めかしいヒロイズム(英雄主義)に陥らずに済むのではないかと楽観的に考えたりもする。
 
 
 本書の内容で特に興味深いと思ったのは、本書が日米双方を並行して記述しているため、日本から見た太平洋戦争や戦後復興政策だけでなく、アメリカから見た日本社会や日本政治についての認識も描かれている点である。特に、アメリカ国内にける真珠湾の被害者や戦勝国としての国民及び大統領の過激な対日政策の主張と、それを抑えようとするわずか数人の知日派とのせめぎ合いはおもしろい。
 
 
 なお、「学術文庫版へのあとがき」によれば、この本は小泉首相も読み、その結果、アフガン戦争後にブッシュ大統領・パウエル国務長官に、第二次大戦後の対日占領政策でのアメリカの迅速な対応を教訓にアフガンも復興支援を速やかに行うべきことを訴え、日本でのアフガン復興支援会議につながったとのことである。小泉首相の満足そうな顔が思い浮かぶ。

 しかし、イラク戦争に際してのアメリカの戦後占領政策の重大な欠陥はしばしば指摘されるところであり、結果からみれば、小泉首相のアフガン戦争時のアドバイスはブッシュ大統領にはしっかりとは届いていなかったようだ。
 
 
 しかし何はともあれ、この本は「なんで政治家が歴史という過去の問題ばかりを議論しているのだ? 政治家になるには歴史に詳しくないといけないのか? それなら歴史学者が入閣することもあり得るのか?」というような素朴な疑問を現在の政治に感じつつも、「それでも歴史も知らなければ」と思っている適度なバランス感覚を持った人におすすめである。



〈前のブログでのコメント〉
経験にだろうが、歴史にだろうが、゛学ぶ”姿勢があればいいと思うんですけど、どうも歴史をもてあそんで気持ち良くなろうとする人が多いようで困ります。

最近は日本でも所得格差が開いてきたという問題提起をあちこちで見かけます。ヒルズ族に代表される資本家の天井のない資本蓄積と我等プロレタリアの惨状は確かに実感を伴ってきました。いよいよXデーが近づいてきましたか(笑) ていうか、革命が歴史的必然なら過去の歴史はどうでもいいということになりますね。果報は寝て待て、ということですね(笑)

注:゛私は”共産主義者ではありません(笑)
commented by Stud.(管理人)◆2FSkeT6g
posted at 2005/07/15 17:47
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと申します。

すべての歴史は階級… の歴史とも。
commented by やっさん
posted at 2005/07/15 16:02
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