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 盛山和夫、土場学、野宮大志郎、織田輝哉編著 『〈社会〉への知/現代社会学の理論と方法(上) 理論知の現在(剄草書房、2005年)
 
 
 数理社会学会の機関誌『理論と方法』の「2000年記念特集シリーズ」を基礎にして編まれた書。多くの論文は、社会学における理論および方法の観点から、いくつかの主要な領域における現時点での成果のまとめと今後の展望が述べられている。このタイプに属する論文として、具体的には、理論社会学(盛山)、古典理論の数理化(高坂)、権力理論(志田)、合理的選択理論(太郎丸)、秩序問題(織田)がある。他にも、社会性の起源(大澤)、ルーマン(佐藤)、ハーバーマス(土場)などが論じられている。なお、下巻は「経験知」についてとなっているが、上巻に下巻の目次は載っていない・・・。
 
 
 さて、素人である自分からすると、社会学という学問はどうも全体像が掴みにくい。(もちろん、勉強もせずに掴もうとするのが悪いのだが。)それは、ひとつには、方法論について依然として一つの流れにまとまっていないからではないのか、と勝手に想像している。そして、そのことは当然、「理論」のあり方にも影響してくるはずのものである。であるなら、理論と方法を扱った本書を読むことで、社会学の全体像を少しでも得られるのではないか、と思い読んでみた。

 で、その結果、(自分の中で想像している)「社会学の全体像」とおぼしきものは得られなかった。個々の方法や理論や対象が別個に論じられていて、社会学全体における横のつながりや縦の流れはあまり見られなかった。

 ちなみに、自分の社会学理解の稚拙さを披瀝するなら、ウェーバー、パーソンズ、ルーマン、ハーバーマス、ギデンズという有名人たちのそれぞれの大まかな位置付けが分かるくらいである。だがしかし、そもそも彼らが社会学全体の中で主流を占めているといって良いのかどうか、からしてよく分からない。それから、社会システム論という領域が検証可能な理論・主張であるのか、そして、もしそうでないなら社会システム論は規範理論になるのか、も昔から分からないで気になっている。
 
 
 とはいえ、本書は、個々の方法や理論ごとではその最先端の業績がよくまとまっていて、勉強になった。

 個人的には、特に、2章(古典理論の数理化)と6章(合理的選択理論)がおもしろく、かつ勉強になった。

 2章と6章は似た構成をもつ論文になっている。すなわち、数理および合理的選択理論について、その最新の業績を紹介しつつ、根強く存在するその方法論への批判者の主張を検討している。そして、擁護派と批判派との間で対立が生じる原因とその掛け橋の可能性について言及している。

 特に、対立が生じる理由が述べられ、対立する両者(例えば、デュルケーム数理社会学とデュルケーム研究)は分析の目的や関心の持ち方が違うとされ、両者は共存が可能だということが丁寧に説明されているところは、対立をいたずらに煽るようなスタンスではなくて共感が持てた。
 
 
 また、7章の「秩序問題への進化論的アプローチ」も、難しくてどこまで理解できたか怪しいが、おもしろかった。この論文で筆者(織田輝哉)は、秩序という概念を、一定の斉一性が存在するだけの「事実的秩序」と、人々が一定の倫理規範に従って行動している「規範的秩序」とに分け、後者を説明するために理念的“実在”として存在している規範を扱った一次理論(=それ自体のロジックを説明する理論?)を構築する必要があると説く。そして、そのために進化論的アプローチを導入する。なお、ここでいう進化論的アプローチとは、生物学的な淘汰の枠組みだけでなく、社会文化的な学習・模倣のプロセスをも含んでいる。この進化論的アプローチの導入は、詰まるところ、人間の心のメカニズムをも進化するものとして捉えることで、秩序の存在を説明しようとするものである。

 上で述べた数理的説明や合理的選択理論の最大の問題点は、説明に感情や規範を上手くは組み込めないことであり、その点、秩序問題というゲーム理論や数学的説明が主流となっている問題に規範という観点を持ち込む試みはとてもおもしろかった。自分の理解力では、その成功如何は判断しかねるが・・・。
 
 
 ちなみに、下巻は今のところ読まない予定。なぜなら、読むことが可能な(あるいは、読むことを選択する)程には時間がないから。
 
 
 
[この本を読んで関心を持った本] 
(新企画!実際に読むかどうかは気にしない、ただのメモ。)
・盛山和夫ほか編著『〈社会〉への知/現代社会学の理論と方法(下) 経験知
・土場学ら編『社会を“モデル”でみる :数理社会学への招待
・千葉大学文学部社会学研究室『NPOが変える!?:非営利組織の社会学』
・R.Boudon「Beyond Rational Choice Theory」
・マーティン・ジェイ編『ハーバーマスとアメリカ・フランクフルト学派

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