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by ST25
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 森博嗣 『大学の話をしましょうか(中公新書ラクレ、2005年)
 
 
 名古屋大学助教授(建築学)でありながらミステリー作家としても活躍している著者がインタビューに答える形で、学生、大学、自分自身について語る。学力低下やニートや国立大の独立行政法人化など時事的な問題から、作家になった理由や国立大学の内側といったとても興味深い初歩的な質問まで、読者の興味に沿った内容となっている。

 著者の、肩の力を抜いた、冷静な、シニカルでありながら前向きなスタンスは、とても心地よく、かつ、とても好感が持てる。そんなわけで、最初から最後まで新鮮な気持ちで読み終えることができた。

 そんな著者の“しなやかな知性”を味わうことがこの本の最大の楽しみであって、個別の問題の如何はこの本の感想としてはあまり重要でないように思える。(言うまでもないが、だからといって著者の指摘が実際の問題に対して無意味だということには全くならない)

 そんなわけで、著者のスタンスがよく表れている中で自分が好きな箇所を一箇所だけ引用して終わりにしよう。

受験戦争の時代の子供は、もっと勉強していたのではないでしょうか。ところが、勉強ばかりする子供たちを哀れんで、なんとかゆとりのある教育をしていこうじゃないか、という動きがここ数十年にあったわけです。
 大人も同じですね。「日本人は働きすぎだ、もっとゆとりのある人生を送ろう」と叫ばれ続けてきた。そういうわけで、休みを増やし、ノルマを減らして、とにかく、遊べるように努力をしてきたわけです。
 それで、今は、大人も子供もみんな遊ぶようになりました。ですから、思いどおりの結果になったといって良いのではないでしょうか。子供の学力は確実に低下していますが、低下しても大丈夫な世の中を作ったわけで、これはこれでひとつの成果だと僕は思いますよ。
 学生は勉強しなくなりましたが、その分、きっと楽しいことをしているのでしょう。良いではありませんか。「そんなことでは日本の未来は危ない」といった意見もあちこちで聞かれますが、いるんですよね、なにかというと日本の未来を危惧する人たちが・・・。「日本の子供は世界で一番勉強する子供だ」って自慢がしたいのでしょうか?(pp30-31)

 ちなみに、著者は、学力の定義の議論が欠如していることや、もっと日本が危機的な状況になったら対処すればよいなど、この引用では不完全なもののいくつかについては言及している。
 
 
 
 ところで、この著者の小説は以前から一度は読んでみたいと思いつつ未だに読まずにきている。著者に対する関心が盛り上がったこの機会を逃さずに読んでみようと思ってはいるのだが。

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