[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
バルトロメー・ド・ラス=カサス 『インディアスの破壊についての簡潔な報告』 (添田秀藤訳/岩波文庫、1976年)
15~16世紀に中南米に押し入ったスペイン人
スペイン人無法者の残虐な行為の内容については、どの場所においても同じようなことが行われているから、一箇所だけ引用すれば十分だろう。
「 スペイン人たちはインディオたちを殺したり、火攻めにしたり、また、彼らに獰猛な犬をけしかけたりした。さらに、スペイン人たちはインディオたちを鉱山での採掘やそのほか数々の労働で酷使し、圧迫し、苦しめ、結局、その哀れな罪のない人びとを全員絶滅させてしまった。両島(サン・フワン島とジャマイカ島)には、かつて六〇万人以上、いな、一〇〇万人を越える人が暮らしていたであろうが、今ではそれぞれ二〇〇人ぐらいしか生き残っていない。」(p39)
その悲惨さは、全共闘学生に糾弾された丸山眞男の有名な発言である、「こんなことはナチスも急進右翼学生もしなかった」という言葉がまさにぴったり当てはまるような内容である。この征服者たちの行為は、時代が違うとはいえ、ナチスより酷いといっても言い過ぎにはならないだろう。
スペイン人がそんなことをした理由は、金などの財貨を得るためと、キリスト教の布教のためであった。目的自体はどちらもスペイン本国の意図するところではあった。しかし、敬虔なカトリックの聖職者であり、忠誠なナショナリストでもあるラス=カサスは、実際に行われていることは国王や主キリストの了解するところでは到底ないと考え、スペイン皇太子に向けてその実態を知らせるためにこの報告を書いた。
もちろん、そんなラス=カサスの宗教的・政治的な属性および当時の規範から生じる限界はある。それらは、例えば、キリスト教の受容とスペイン国王への従属についての独善的な正当化や、キリスト教の教えを受けていないインディオに対する姿勢や、新大陸におけるドイツ人の行為に対するスペイン人への行為に対してより一層激しい非難などに表れている。
今から見れば、キリスト教布教の必要性を強硬に信じて疑わなかったラス=カサスも、残虐な征服者と同様に帝国主義者だということになるだろう。いわば、彼はキリスト教を信仰することでのみインディオたちは“解放”されると考えていたわけだ。キリスト教を信仰することが“解放”への唯一の道だとは全く思わない自分からすれば、半強制的な布教は、お節介であり、強要であり、侵略であり、帝国主義でしかない。そう考えると、ラス=カサスを安易に賞賛するのは慎まなければならないように思える。
〈前のブログでのコメント〉
- 全く考えさせられます。ヒロシマ・ナガサキしかり、イラクしかりです。平和、自由、民主主義という大義が泣いています。ちなみに、アジアを“解放”したらしい行動はスペイン人征服者と酷似です。
- commented by Stud.◆2FSkeT6g
- posted at 2005/12/21 18:35
- 「善意」は悪意と同じかそれ以上に人を殺すものかもしれません。常に他への敬意と自己の不完全さを心に留めなければ。
- commented by やっさん
- posted at 2005/12/21 15:56