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 鈴木基史 『社会科学の理論とモデル2・国際関係(東京大学出版会、2000年)
 
 
 国際関係論の教科書。国際関係におけるリアリズムとリベラリズムの諸理論を提示し、それぞれを数理やゲーム理論で証明し、簡単に事例を適用するという構成。したがって、リアリズムはきれいに説明されているけれど、リベラリズムの理論や概念は総じて弱いように見えてしまう。とはいえ、著者は方法論的に一貫した基準から誠実にリベラリズム理論も検討しているから一方的な印象は受けない。また、数理やゲーム理論の部分はそれほど難しくはないから、全てとは行かないまでもある程度は理解できた。

 この本を読み通すと、数理やゲーム理論を用いた抽象的なモデルも色々な工夫が凝らされて精緻化されているのがよく分かる。直感的に思い浮かべることができるレベルを大きく超えている。ただ、戦争や同盟など国際関係の分析対象は事例が少ないだけに、実際の国際関係の動きに即した後づけのような印象を受けた。もちろん、それぞれのモデルは一般性のあるものなのだろうけれど、説明し得ない重要な事例が出てくるたびごとに新たな通説(モデル)が誕生していくのではないかという気がしてしまう。まだ、発展途上の分野なのだろうけれど。
 
 
 それで、学問的な成果を参考にしつつ学問的営為とは離れて考えるに、国際政治においては“普通に行けば”リアリズム的な世界にどんどん進んでいく。それはこの本が十分なほどに証明してくれている。しかし、それだけに政治家やリーダーの特殊な逸脱的な行動の意味は大きいと言える。リアリズムへと向かう必然性を覆す行動を行えばヒーローとなるだろう。ただ、その行動が必ずしもリベラリズム的なものであるとは限らない。端的な例が小泉首相の靖国参拝である。極端な例は独裁者の暴発ということになるだろう。

 こう考えてくると、リアリズム的なものから逸脱し、かつリベラリズム的なものを実現したリーダー・政治家の“非常識さ”は相当なものだと感嘆せずにはいられない。

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