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 井堀利宏『経済学で読み解く日本の政治(東洋経済新報社、1999年)
 
 

経済的な誘因をきちんと考慮して、人々の実際の利己的行動を前提として、それでも、結果がより適切になるように、全体の制度を設計する必要がある。そのためにも、日本の政治問題を読み解くうえで、経済学的な視点は有益だろう。 (p8)

 との考えのもとに書かれた本。

 
 
 そして、前半では、投票行動、政党の行動、圧力団体について論じられている。

 最初は、定石どおり、有権者が投票するか棄権するかに関するダウンズのモデルから始められている。

 すなわち、その有権者の一票が投票結果に影響を与えられる可能性を「P」、異なる政党や候補者を選ぶことによって期待される利得を「B」、投票のコストを「C」とすると、「P×B-C≧0」の場合に投票するとされる。

 ただ、著者が提示する上の式では、ダウンズも言っていた(ように思う)「投票に対する義務感(D)」とか「民主主義を守るという目的」といったものを無視しているから、次のような愚かな主張を恥ずかしげもなくすることになってしまっている。

一般的に、すべての人が強制的に投票させられる場合に実現する結果と同じことが、多くの有権者が棄権するときにも生じるとすれば、そうした棄権はよい棄権である。これは、投票・開票の直接・間接の費用を小さくするメリットのある棄権行動である。
 前述の数値例では、4000万人の有権者が棄権することで、440億円が節約できる。こうした場合に、選挙管理委員会が巨額の税金を投入して、棄権防止キャンペーンを行うのは、税金のむだである。 (p20)

 やはり、「P×B+D-C≧0」みたいにしないと。

 いずれにせよ、前半はこんな感じの話がされている。
 
 
 で、後半では、「第四章 財政再建を阻むもの」、「第五章 問題先送りの損得勘定」といったような経済問題が、経済学的に論じられている。(全てではないが。)

 正直、財政赤字を憎むばかりに熱くなり、当初の目的から逸れているように感じる。

 しかも、内容は、「既得権が財政赤字を生んだ!」、「既得権をなくせ!」、「既得権を打破するには政治のリーダーシップが必要だ!」ばかり。

 そんなに「既得権をなくせば財政赤字がなくなる」と言うのなら、財政赤字の総額と同じだけ(つまり、年額で数十兆円)の「既得権が生んだムダ」を具体的に列挙してくれ。「TVタックル」が地道に取り上げているものの1万倍以上のものになるはずだ。これはすごい!(できたらの話だけど。)
 
 
 個人的には、経済学的に政治を分析することにやぶさかではないけど、経済学を政治の分野に単純に当てはめるというのでは、政治の存在意義を否定しているのと同じことであるように思える。政治固有の論理や特徴は尊重する必要がある。そのためには、憲法とか政治哲学とかが政治の重要な目的を語っているから、それらを学ぶ必要があるのではないだろうか。

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