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 田中秀臣『経済政策を歴史に学ぶ(ソフトバンク新書、2006年)
 
 
 格差社会論、構造改革主義批判、エコノミスト市場、日本経済学史、リフレ政策といった、著者がこれまで各所で発表してきた文章をまとめたもの。

 最近の経済論壇を盛り上げている牽引役の一人である著者が、そのブログなどで書いているものが基になっているため、ネットを中心とした最近の経済論壇を理解する手助けになる。(これで著者のブログの専門的な記事も読めるようになるかも)

 もちろん、ブログで書かれているものより一般向けの丁寧な説明になってはいる。とはいえ、特に後半では、貨幣と実体経済、フィッシャーの公式関連など、経済学の専門用語を用いたちょっと難し目の話も入っている。(ただ、頑張れば十分に議論をフォローできる、と思う)
 
 
 具体的な内容の中で、自分が目を見開かされたことの一つは、小泉首相が当初の威勢のいい市場原理主義的、清算主義的な路線を早々と放棄し、その後、景気に対して「何もしない」首相であったという指摘。

 この話は高橋洋一の雑誌記事や野口旭『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』に書かれているようである。野口旭の本には2003年以降に景気が上向いた理由についても書かれているようだから、いつか読んでみたい。

 それにしても、イメージとは恐ろしいものだ。それに、(景気対策にはほとんどならない)郵政民営化の断行とかにも騙された。(自分は小泉首相の市場原理主義政策を支持してないからいいのだけど。)道路公団民営化とか郵政民営化とかがヒューリスティックの役割を果たしていなかったということだ。
 
 
 目を見開かされた二つ目は、「構造改革」と言ったとき、何よりも当初の小泉首相や竹中平蔵や野口悠紀夫といった人たちが典型な、“供給”側を重視する見方が思い浮かぶけれど、「“需要”側を重視する構造改革もあり得る」という指摘。

 すなわち、「構造的な需要不足を打破するための新産業創出」のような「構造改革」を唱えるケインズ経済学者の主張である。小野善康、吉川洋が典型である。確かに、言われてみれば彼らも「構造改革」を目指している。

 ちなみに、吉川洋は経済財政諮問会議のメンバーである。果たして供給側を重視する構造改革主義者と意見が一致するのだろうか? 吉川洋にはケインズに関する著作があるだけに、「主張が違うのでは?」と以前から思っていた。著者は最後の「ブックリスト」のところで、吉川洋の著書(『構造改革と日本経済』)を次のように紹介している。

小野(善康)と異なり、構造改革主義ケインズ経済学を突き進めることで、新古典派の彼方に消えた本。 (p220)

 分かったような分からないような説明だが、・・・・そうなのだろう。
 
 
 この本には、タイトルの通り歴史上の(日本の)事例・経済学者が数多く取り上げられている。しかし、時事経済問題に興味がある自分のような人間にとっては、なくても良かったかなと思えてしまう。ただ、それでも時事経済問題に関する整理・理解を深めることができたのだから特に問題はないけど。

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