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 梅森直之編著 『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る(光文社新書、2007年)
 
 
 『想像の共同体』の著者が早大で行った2日に渡る講演と、編者による解説を収めた本。

 アンダーソンによる講演の方は、彼の生い立ち、『想像の共同体』の誕生秘話、『想像の共同体』の現在の自己評価が、(主にのぞき見的な興味から)そこそこおもしろかったけど、他のところは話の対象がややマイナーで、その対象・話題にもともと興味がない人間には少々きつかった。

 それに対して、編者による解説の方は、平凡な講演の解説に留まらず、学問のより大きな流れの中にアンダーソンの研究を位置付けながらその意義や含意を解説していて、おもしろく、勉強になった。
 
 
 アンダーソンの議論のおもしろさは、「国民」や「国家」といった事象の“認識が相対的であらざるを得ないメカニズム”まで提示しているところにあると思う。(出版資本主義とか。)

 絶対的であると思われている事象の反証例を挙げて「 ほら相対的でしょ 」と言うだけでは議論として弱いけれど、認識が相対的になるメカニズムまで明らかにすると、説得力が格段に増す。

 例えば、トマス・クーンのパラダイム論が「そういう見方もある」程度にしか引用されない(ように思える)のは、この、“メカニズムの提示”に成功していないからではないだろうか。

 逆に言えば、アンダーソンの「想像の共同体」の議論は、右派にとっては誠実に対峙しなければならない主張だということである。

 メカニズムまで提示されていると、不毛な主張の投げかけ合いで終わることも避けやすいだろうし。

 ただ、(多少リベラルな)右派・コミュニタリアンである宮崎哲弥なんかは、(おそらく)アンダーソンの議論を否定するのではなくそれを受け入れて、「 テレビは国民という枠組みを作る役割を果たしている(から、いくら内容が酷くても全否定はできない) 」というようなことをしばしば言っている。

 このように右派が取り入れることが出来るのもメカニズムが提示されていることのメリットである。
 
 
 いずれにしても、「比較の亡霊」に取り憑かれたことのないような人たちには、「相対的」を強調する(敬遠されがちな)ポストモダンな議論の中でもアンダーソンは是非とも読まれるべきだと思う。



〈前のブログでのコメント〉

「比較の亡霊」…。苦悩こそが誠実さのあかしであり、正しい道だと信じたいものです。
「鑑定」楽しみにしてます。
commented by やっさん
posted at 2007/05/23 13:16

人生論に落とせば(※「比較の亡霊」は、元々アイデンティティとか認識の二重性を説明するのに使われている言葉なので、人生論とそんなに離れてもないですし。)、比較の亡霊から安易に逃れる「ポジティブ(・シンキング)」という名の現実逃避、現状肯定に堕することなく、自分の気持ち・状況の全てをきちんと受け止めた上で昇華・止揚していきたいものです。でないと、自己満で基盤の危うい認識・思想しか作られず、社会や他者とつながることを不可能にしてしまいます。
そして、それこそが、真に自分を大切にし、社会や他者と本質的につながりながら生きていくほとんど唯一の道だと思っています。
やっぱり本とはあまり関係ないですね(笑)

さらに本と関係ないですがw、「鑑定」は今から頑張ります。明日にはできると思います。
commented by Stud.@管理人
posted at 2007/05/23 19:13  
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