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 デイビッド・キーリー 『BMW物語』 (嶋田洋一訳/アスペクト、2005年)

 この本は本屋で表紙を見てあまりにかっこよかったために衝動買いした。濃紺の背景にBMWのマークがでしゃばり過ぎない適度な大きさできらめいているのだ。そして、タイトルが『BMW物語』ときたら、まるで、BMW社が出したオフィシャル・ブックみたいになる。そうなると、この本の中で述べられている「BMWブランド」の力に引き寄せられて買いたくなってくるのもやむを得ない。

 ちなみに、この本の元のタイトルは『DRIVEN: Inside BMW, the Most Admired Car Company in the World』。内容から言っても邦訳書の『BMW物語』という方が相応しいし、そして、何より魅力的だ。

 内容はBMW社or車の(バイクとレース以外の)あらゆる側面を網羅的に取り上げていて、BMWの教科書といった感じになっている。具体的には、各章のタイトルから抜き出すと、「マシン」、「歴史」、「一族」、「ブランド」、「ブランド戦略」、「大失敗」、「スタイリスト」、「水素未来」といった内容である。これを見ても分かるように、他の数多くの自動車会社を扱った本と同じく、本書もBMW社の経営的な側面(ブランド戦略やローバー・グループを買収した失敗や社長の行動など)が多く書かれている。しかし、だからといって、BMWブランドを語るに際して実際のBMW車についての言及は必要不可欠であり、BMW車についても十分に触れられている。

 「USA Today」紙のデトロイト支局長である筆者は基本的に(ほとんど?)BMWに好意的な立場から書いている。そのため、BMWの弱点についてはあまり知ることができない。しかし、イデオロギッシュにBMWを擁護しているわけではなく、親BMWではない人でも読めるだけの冷静さは保たれている。

 というわけで、本書はBMWの全貌を知るにはなかなかまとまった内容になっていて、興味があればおもしろいと思える。

 さて、「BMW派か、ベンツ派か?」という庶民にとっては夢想的な問題は、車好きなら必ず自分の答えを持っているだろう。両者は、共にドイツの車であり、価格帯も同じくらいで、共に高級志向であることから比較されることが多い。

 かくいう私は、BMW派である。簡単に言うと、でしゃばらない、洗練された外観に惹かれるからだ。

 そして、本書を読んでその印象は間違ってはいないようであることが分かった。

 まず、BMWのブランドや顧客のイメージについての記述をいくつか抜き出してみる。

「ショッピングやファッションに対するブランド志向が高い。若い、あるいは若々しい。充実した人生を謳歌し、仕事面でも成功している。」(p165)

「(BMWの顧客は)自分に対しても他人に対しても要求が高い。なぜなら、忙しい合間の余暇を極力充実させ、気に入ったものに囲まれて過ごしたいと願っているからだ。こうした人種は一般的にディテールにこだわり、自分の趣味に合うものだけを手に入れたがる。単に質がよいだけでは目もくれないが、完璧に気に入ったものに対しては金を惜しまない。」(p210)

 そして、このようなブランドイメージを追求した結果、次のような状態になる。

「競合他社がしのぎを削る中、BMWでは米国の幹部もミュンヘン本社の経営首脳陣も、自社の顧客層が他社に食われることはまずないと悠然としていた。
(中略)
(BMW社の幹部マクダウェルは)以下のように語っている。『BMWを志向する特殊な心理層をつかめる車があるとは思えない。たとえば、メルセデスの購入者はステータス意識が高い。そしてメルセデスも「お客様のステータスにふさわしい車です」と売り込む。また、ボルボの購入者は、その存在感と実用性を好み、とくに安全性を重視する。しかしBMWが狙っている顧客心理層はこれらとは異なっている。』」(pp209-210)

 確かに、自分の価値観とBMW社が自車に乗せようとしているメッセージとは一致している。しかも、

「BMWは焦点を絞ったブランドのメッセージと戦略を徹底していて、全社員の上から下まで、それをしっかり理解している。」(p8)

「BMWは何よりもまず製品のことを考え、生産性や作りやすさなどを考慮するのはその次だ。」(p9)

 という実践を行っているのだ。

 そして、そのブランドイメージは乗り味にも反映させているようなのだ。

「運転というものに夢を感じ、A地点からB地点への単なる移動手段とは考えない人々にとって、最高の運転感覚を味わわせてくれるという意味で、BMWほど熱心な自動車メーカーはほかには存在しない。そこで生産される車は、スポーティな走行と、考え抜かれたエンジニアリングと、独自性と職人気質とスピードとハンドリングの結びつきを、その本質としている。」(p16)

 具体的には特に、前後の重量バランスを平衡に保つように配慮しているとのことである。

 以上のようなことを知ると、BMW派としての立場をより明確化、あるいは、より言語化できるようになる。

 そうは言っても、現実的にBMWの値段はさすがに高いと感じる自分にとって慰めになる事実が本書から観察できる。

 すなわち、本書を通しての日本車に対する好評価である。もちろん、筆者はBMWの独自性により惹かれているのだが、それでもそのBMWとの比較において最も頻繁に出されるのが日本車(特にトヨタ、ホンダ、日産)なのである。どうやら、日本車の性能と信頼性と、それと比べた価格の安さは未だに揺るぎないようである。

 さて、今までBMWを全肯定するようなことを書いてきたが、非難したいところもある。それは、上で書いてきたBMWのブランドイメージとその戦略に賛同するがゆえの疑問である。

 BMWには以前から3シリーズという中型車もラインアップに並んでいた。しかし、近年、急速に小型車市場に参入してきた。果たして、(3シリーズも含めてもいいが)“小さいが値段の高いBMW車”を買おうとする人が、本当にBMWブランドのイメージに合致するのだろうか? 言い換えれば、そのようなBMW車を買う人はベンツの顧客と同様のステータス重視の心理層ではないのだろうか?

 有り体に言えば、それらの小型BMW車はBMW車として“邪道”だと思うのだ。5ナンバーのBMW車を見る度に以前から感じていた違和感を、くしくも本書を読んでより確信することができた。(筆者は否定しているが。)

 しかし、小型車はまだ投入して日が浅いこともあり、これからが見所である。

 さて、最後に、BMWについてのトリビア風の基本情報を二つほど。

 1つは、BMWとはドイツ語で「バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ」の略であり、英語で言えば「バイエルン・モーター・ワークス」で、日本語で言えば「バイエルン発動機製作所」であること。

 もう一つは、BMWの青と白と黒のロゴは、バイエルンの青空を飛ぶ飛行機のプロペラの図案化だということ。

 どちらも知らなかった。もしかしたら一番勉強になったのはこれかもしれない。とにかく実用的である。



〈前のブログでのコメント〉
 早速のコメントどうもです。

 高速用だけBMWというのは走行時の安定性といった安全性を考えれば適切なチョイスかもしれません。私は高速教習のとき他の教習生の100kmでふらふらする危険な運転を体験したので・・・。

 それと、客集めのためか全ての教習車にBMWを導入しているところって結構あるみたいです。私は「コンフォート」という一般にはほとんど売られていない商用車でした。その分、車本来の動きを知ることができたようには思いますが。

 「安全、先端技術というほうに興味がある」のでしたらトヨタ車がベストだと思われます。日本人には日本車が一番合うのかもしれません。
commented by Stud.
posted at 2005/03/04 18:35
 BMWはこれまで一度だけ乗ったことがあります。自動車学校に高速教習専用の教習車として導入されていたので。高い車だから事故ったら大変だ、という感覚でしたので、あんまり覚えていません _| ̄|○
 BMW派かベンツ派かという問題ですが、正直よくわかりません。ただ、ベンツの安全性への信頼というのには惹かれます。車のデザイン、フォルムとかよりも、安全、先端技術というほうに興味があるもので。もっとも、ベンツのこともBMWのこともあまり知らずイメージにすぎないので、自分で好きな車を購入できるようになったら考えます…。
commented by nao
posted at 2005/03/04 15:41
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