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 リービ英雄 『千々にくだけて(講談社、2005年)
 
 
 アメリカ人日本語文学者による実際の9.11体験を基にした小説。

 著者の複雑な立場そのままに揺れ動く心が描写されている。日本とアメリカ、日本人とアメリカ人、日本語と英語、母親と血の繋がりのない妹、平穏と戦争など、9.11に直面して当事者的な立場と第三者的な立場との間で揺れている。

 したがって、9.11を扱ってはいるが、9.11にまさに直面している人物を描いているのであって、改めて9.11を捉え直し総括して書かれた小説ではない。

 個人的には、後者のような総括的な作品の方が好きだが、そもそも9.11を扱っている作品自体が意外にも珍しい。

 やはり、9.11は描くのが難しいのだろうか。

 もしそうであるとするなら、著者がこの小説で描いている心象風景は事件直後だけでなく、事件からしばらく経った時点にも当てはまる描写だったということになるのだが、どうなのだろうか。

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