by ST25
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寺島実郎 『若き日本の肖像――一九〇〇年、欧州への旅』 (新潮文庫、2014年)
1900年のサンクト・ペテルブルグ。王政が揺らぎ社会主義へ傾きつつあるロシアで諜報活動に暗躍する日本人・明石元二郎。
等々、1900年のヨーロッパ各都市の様相と、そこへの日本人の関わりを追ったルポルタージュ風な歴史書あるいは啓蒙書。単行本で出版され、新潮選書になったものが、この度、文庫化された。
筆者の落ち着いた理性的な思索とともにヨーロッパ各国を巡っていると、ヨーロッパの雰囲気にどっぷりと染まってくる。それは、アメリカ的な単純さ、明確さ、冷徹さとも違う。また、それは、日本的な曖昧さ、優柔さ、穏やかさとも違う。
昨今、経済、政治、社会、文化どの分野においても、アメリカ化 vs 伝統的日本という対立軸で語られることが多い。個人 vs 組織、自由 vs 平等、明文化 vs 常識、超金持ち vs 総中流などだ。そこでは、どちらかを選ばざるを得ない二者択一と無意識的に受け取られている。
しかし、そこに現代アメリカでも古来日本でもない「第三の道」は本当にないのだろうか。本書は、欧州を参照にすることで「第三の道」を見いだせるかもしれないという端緒を与えてくれる。それは「アメリカか日本か」という苦渋の決断をせざるを得ないと悲観的になっていた人への希望の光でもある。
1920年代30年代の日本にとっての教訓は現代でも通用しそうだ。
「 欧州が見えなくなると日本は混迷する 」(p301)
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