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 宮台真司、宮崎哲弥 『M2:ナショナリズムの作法(インフォバーン、2007年)
 
 
 俊秀な論客2人による、相変わらず鋭く過激な対談。今回ので最終回。

 書籍用に太田光を交えての鼎談が収録されている。

 ただ、前半の宮崎&太田だけのときは、「全部を覆す」おもしろさを目指す斜に構えた太田光を、宮崎哲哉が真面目に現実主義的に突っ込んでいて議論(の前提)が噛み合ってない。宮台真司が合流してからは解消される。ただ、宮台真司の前では太田光の鋭さも霞んでいる。
 
 話の内容は、女系天皇、ニート、北朝鮮、市場原理主義、国語教育など多岐に渡る。

 そして、その多くは説得的である。
 
 
 ただ一つ、特に気になったのが、今回多用されている「コーポラティズム」。

 ホリエモンや村上ファンドや宮内義彦などを念頭に宮台真司は次のように言う。

従来は「ダーティなコーポラティズム」があったが、国家財政が食い物にされたので「クリーンな優勝劣敗主義」が出てきた。なのに実際は「ダーティな優勝劣敗主義」だった。ならば揺り戻す先は「クリーンなコーポラティズム」しかない。論理的には自明だよ。ところが欧州的な「市民参加によるチェック」の伝統がない。とすれば、いずれは「ダーティなコーポラティズム」へと逆戻りする。
 (中略)
 結局日本では旧来の「ダーティなコーポラティズム」の中に可能性を探るしかないかもしれない。うまく行ってきたはずの「ダーティなコーポラティズム」がどこでつまずいたのかを反省してね。 (中略) 「ダーティなコーポラティズム」でありつつ、ゼネコンにぶら下がって全員で沈むんじゃないような、そんな選択肢を採れるかどうか。 (pp190-191)

 要は、もう一度、戦後からバブル崩壊までそれなりに成功していたやり方(社会主義とも言う)に改善を加えつつ戻そうということ。

 確かに、日本とアメリカという2つしか選択肢がないみたいな議論が多いから、コーポラティズムという大陸ヨーロッパ的な選択肢(用語、理論)を導入することには意義がある。

 だけど、90年代に入るまでの日本経済が成功したのは、本当にコーポラティズム的なやり方のためだったのか? また、(80年代に特に流行った)アメリカ流のマネーゲーム的な投資が入ってきた以外に、90年代以降の日本の経済システムにおいてそんなに“劇的な制度変更”は行われたのか? あるいは、90年代以降の変化をもう「ダーティな優勝劣敗主義」と決め付けてしまっていいのか? それに、日本では「クリーンな優勝劣敗主義」「ルール主義」は無理と言ってるけど、読売新聞の社説を書いてるような世代より下の世代の人たちにはむしろ、談合的な経済システムに対する嫌悪感の方が強いのではないだろうか?

 といった疑問がある。(まあ、どれも対談であるために話がナイーブであるところに由来するような気がするけど。)

 というか、近代主義者宮台真司が前近代的な方向に針路(退路)を取っていいのか?という根本的な疑問がある。これはいかんだろう、と。

 かなり大まかに指摘しただけだけど、今回の本の主張の大枠のところで考えが違うのは以上の点。
 
 
 コーポラティズムや政治経済学的な観点から戦後の日本経済を見ている研究というのはあるのだろうか?

 『比較政治経済学』をぱらぱら見た感じ、日本はコーポラティズムという概念からは少し逸れているような扱われ方をしていた。

 となると、経済学の見方(三輪芳朗などによる企業が頑張ったという主張)がやっぱり有力だということだろうか? あるいは、両者は矛盾しないのだろうか?

 興味深い。

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